2025年8月23日土曜日

ボイスレコーダー基板2つ目 ADSU01

 先日、ボイスレコーダー基板の検討として、DFR0745を試してみました。
結果として仕様的に合致しなかったので改めて別な基板を探しまして、
見つけたのがビット・トレード・ワンのADSU01

見つけ次第すぐに発注したものの、盆休み中だったもんで届いたのは盆休み明け。
その後、仕事の合間を縫って、ちまちまと評価テストを行っていました。 
現時点の感触はDFR0745より非常に良いです。

 

DFR0745は基板のみで音声の録音もできますが、
ADSU01は 再生データーをPCから転送する必要が有ります。
そういう意味では、ADSU01はボイスレコーダー基板ではなく、
再生基板と言うのが正しいでしょう。

また、DFR0745と異なり、スピーカーを駆動できるアンプを載っていません。
その為、再生にはアンプ回路が別途必要になります。

しかしUSBポート経由で簡単にデーターを転送できる点、
再生の為の外部I/Fの使い易さという点から、
ADSU01は組込み用途を強く意識していることが感じ取れます。

もちろん、ADSU01もSDカードを使用せず、
オンボードのFLAHメモリにデーターを保持するので、
SDカードに由来する動作不具合は発生いたしません。


DFR0745ではPCに繋ぐとUSBメモリーとして認識され、
データーファイルを自由に読み書きすることが出来ました。
(読み書き出来ても事実上無意味だったのですが)

ADSU01ではあくまで専用ツールを経由してデーターを書き込みます。
読み出しは出来ない模様。
この専用ツールの動作がちょっと判りづらくて、
きちんとADSU01を認識できているのか、きちんと書込み出来ているのか、
ハッキリしないという難が有りました。
結果的に問題無く書けていたので結果オーライなのですが・・・・

 

マニュアルにはサンプリングレート約40KHzで、
音質も良いという文言が見受けられます。
パッと見の感覚だと、音楽再生にも耐えられるレベルの音質なのか?
と錯覚してしまいそうですが、残念ながらそこまでではありません。

音質的にはDFR0745と大差無く、音声ならば十分という感じです。

ADSU01ではPICマイコンのPWM出力を利用してDA変換を行ってます。
ちなみにPWMのベース周波数は約46.8KHzでした。

DA変換後のノイズ除去の為、CRローパスフィルターが2段入ってます。
このフィルターのカットオフは約8KHz。
試しにこのLPFをスルーしてみましたが、
ノイズが増えるだけで再生帯域が広がりはあまり感じませんでした。
どこかの段階で、再生データー自体に高域カット処理が施されているのかも? 

 
再生データー長ですが、最大で約90秒とのこと。
FLASHメモリーの容量による制限なのでしょうね。
このADSU01では4種類の再生データーを持つことが可能で、
どれを再生するか簡単に選択できます。
この仕様も非常に使い易くて高評価なのですが、
4種類合わせて約90秒という話なのです!
従って、実際に4種類使用するのは結構難しいかもしれません。
もっとFLASHメモリーの容量が大きかったら良かったのですが・・・・

 

あと要注意点として、USBコネクターがミニBタイプです(笑)
うちにはケーブルが有りましたが、持って無い方もいらっしゃるかも?

 

余談ですが、この基板、手実装のようですね。
チップ部品のハンダが盛り過ぎ傾向。
抵抗は問題無いのですが、チップコンは ちょっと心配かも・・・・・

2025年8月13日水曜日

レベル変換基板について

先日、Xにて「ラズパイのI/Oは3.3Vだから、5Vデバイスを繋ぐ際はレベル変換が必要だよ」という書込みを見かけた。
これはとても大事な話なのだが、ビギナーの方はスルーしがち。
しかしこの対処を怠ると、原因不明の謎動作が起きたり、
最悪の場合 破損が発生したりするんですね。

 

先のXの書き込みでは、中華製?と思われるレベル変換基板を使用していました。 
写真を見る限り、MOS-FETを使った双方向レベル変換基板っぽい。

この方式の変換基板は動作の巧みさゆえに結構話題になり、
瞬く間に変換基板のキットがあちこちで販売される状況になりました。
かく言う私も設計までは完了させ、基板を作るかどうか検討したものです。
(結果的に基板化は見送りましたが)

 

今回の話は ここからが本題。

このFETを使った双方向レベル変換回路、 電源と変換したい信号線を繋ぐだけなので、
非常に扱いが楽なのがメリット。
そう聞くと、ビギナーにぜひお勧めしたい一品と思われそうですが、
ちと注意点があるのです。

単にそれっぽく信号の電圧が変わってくれるだけなら、これで構わないのですが、
専用のレベル変換ICを使った場合の様な電圧レベルを期待する場合、
この方式の変換基板を使ってはいけないのです。

 

一応、この双方向レベル変換回路の動作を説明しておきましょう。
と、ここで私が解説すると、結構なボリュームになってしまうので、
Digi-Keyさんの資料を紹介させていただきます。 

動作原理 

いやほんと、なかなかに上手い回路だなと感心するわけですが、
世の中そんな美味しい話ばかりじゃない!!(笑)

この変換回路の要注意点を簡単に纏めますと、

1.ローレベル時は信号出力デバイスが全ての電流を吸う事になる

  この変換回路には+電源を供給するけれども、GNDへ繋がる箇所がありません。
  これは、信号がローレベルになる時は、信号を出してるデバイスが、
  各部を流れる電流全てを吸ってるからなんですね。

  ロジックICでの変換の場合、I/Oピンの入出力電流なんて
  ほぼ気にする必要がありません。
  特殊なICを使わない限り、流れる電流は微小だからです。 

  しかしこの双方向変換回路の場合は ちと注意が必要です。
  2個存在するプルアップ抵抗の値によっては、結構な電流が流れるからです。

2.ローレベル電圧が0Vから若干浮く

  ロジックICでの変換の場合、ローレベル時の電圧はICに規定されていて、
  当然問題にならない電圧になっています。

  ではこの双方向変換基板の場合は、上記よりも少し電圧が上がるんですね。
  具体的には下記の電圧になるんです。

  ローレベル電圧=信号出力デバイスのローレベル電圧+FET部のドロップ電圧

  注目はFET部のドロップ電圧です。
  どちらが出力側になるか次第で、ローレベル時の電流の流れが変わりますが、
  その際、FETのドレイン~ソースを流れるか、内蔵ダイオードを流れるか、
  の2択となるわけでして、どちらの場合でも電圧ドロップが発生します。
  これでローレベル信号を出してるデバイスのピン電圧に加算されちゃいます。

3.動作速度も遅め

  一般的にロジックICの出力というのはトーテムポール出力になっていて、
  HからLもしくはLからHへの変移時、出力段のFETで信号を出します。
  ですので、それなりに高速です。

  この双方変換回路は、基本的にオープンドレイン回路がベースです。
  ですので、HからLへの変移時は まぁそれなりに速度出るでしょうけど、
  LからHへの変移はプルアップ抵抗に依存します。
  従って速度はプルアップ抵抗の値次第なんですね。 
  プルアップ抵抗の値を小さくすればそれなりに速度は出ますが、
  先に書いた電流の問題があるので、抵抗値を小さくするのにも限度があります。

  このプルアップ抵抗値には正解が無いので、
  市販されてるレベル変換基板を使用する際は、
  ブルアップ抵抗の値に留意する必要があるでしょう。

 

とまぁ、こんな感じなのですが、お手軽な様で割と面倒な感じ。
この双方向変換回路を否定するつもりは さらさらありませんが、
私は専用ICでレベル変換することが多いという感じです。 

2025年8月10日日曜日

DFR0745と格闘

某案件用に手頃なボイスレコーダー基板を探したところ、
DFRobotのDFR0745を発見。
スイッチサイエンスにて販売していたので、早速入手してみました。

ちなみにスイッチサイエンスでのページはこれ。
DFR0745 

小型で、電源も3.3~5Vとワイド対応。
データーは内蔵フラッシュに記録される為、SDカードに起因するトラブルとは無縁。
内蔵フラッシュ容量も16MBと結構な大容量。
最大40分まで録音可能とは十分すぎます。
何より特筆なのは、USBポートにより記録したデーターを取り出せる事。

USBでPCに繋ぐと、データー格納域がフォルダーとして見れます。
録音データーはMP3ファィルとして見えるので、
それをそのままPCにコピーして取り出すことが出来るのです。 

とまぁ、これらを見ると非常に良さげなデバイスに思われます。

 

そもそも某案件での使用目的は、APR9600搭載基板からの置き換え。

上記の仕様を見る限り十分な気がしましたが、
実際に動かしてみないと結論は出せません。

というわけで、テスト環境下で実際に動かしてみました。

 

・・・・・う~ん、結論から申し上げるとAPR9600からの置き換えは難しいです。 

難点その1  操作I/Fの差異 

  APR9600基板では、単純な接点信号だけで再生スタート出来ました。

  ではDFR0745を見ると、一見すると接点信号で再生できるように見えます。
  ところが実際に難が有るんですね。

  DFR0745ではデフォルトの状態がスリープモードなのです。
  再生ボタンを1回押すとスリープモードから再生待機モードになります。 
  その状態でまた再生ボタンを押すと、やっと再生が開始されるのです。

  更にやっかいなのは、余計な音声案内が付随している点。

  この基板、しゃべるのです(笑)
  スリープモードから再生待機モードへ移行する際、モードをしゃべるのです。
  音声ファイルの状況によっては、再生終了時にもしゃべります。 
  組込みで使おうと重さ寺、さすがにこれは使えません。
  ちなみに発声は中国語です。

 難点その2  リピート再生

  APR9600基板では再生はワンショットでした。
  接点信号1回につき、1度しか再生されません。

  ところがDFR0745ではリピート再生なのです。
  再生停止させる為のボタン操作を行わないと、何度も再生されます。
  そういうのが重宝する用途も有るんでしょうが、今回はダメなのです。

難点その3  音声ファイルのフォーマット

  音声データーのファイルをPCから読み書きできる旨は先に述べた通り。
  ならば再生するファイルをPC側で用意して、DFR0745へ転送したいとこですが、
  実はこれ、うまくいかないのです。

  ファイルの書き込みは普通にできるのですが、再生でトラブるのです。
  そもそもDFR0745の音声データーファイルはMP3形式とは言っても、
  ちと特殊な様でして、そこら辺に問題があるのかと。 
  参考までに、以下がDFR0745でエンコードしたファイルのフォーマット。


    ですので、再生データーはDFR0745側でエンコードする必要あるわけですが、
  ここでもまた難が出てくるのです。

  DFR0745のアナログ入力はマイク端子しかありません。
  そのマイク端子はオンボードのマイクとパラ接続されているのです。

  ですので、マイク端子からアナログ信号を入力中、
  マイクからの周辺雑音も混ざってしまうわけですね。
  まぁ、オンボードマイクを物理的に排除する手も有りますが・・・・ 

 

とまぁこんな感じでして、私の方としてはDFR0745の使用は断念します。
もしかしたら、シリアル信号線経由でユニットを制御すれば、
上記の問題点は いくつか解決できるのかもしれませんが、
その検証については他の方にお任せいたします。(笑) 

 

2025/8/11 追記

DFR0745に載ってる石のデーターシートを覗いてみると、
シリアル通信制御のコマンド一覧が有りました。
先に書いた再生動作についてはシリアル制御すれば解決できるっぽいです。
ただ、モジュールがしゃべる件については不明。
これをディセーブルするコマンドというのが見当たらないからです。
実機確認するしかない模様です。 

 

2025/8/11 追記2

気になったので、DFR0745をシリアルでアクセスしてみました。

最初、自家製EIA-574レベルを噛ませ、
TeraTermから手打ちでコマンドを送信してみたが、なぜかうまく通信できず。
DFR0745をコールドブートさせると"OK"が届くので、ハード的な問題で無い模様。

もしやと思いTeraTermではなくシリアルコマンドエクスプローラー2を使用し、
コマンドを送ってみると正常に通信出来ました。
要するに手打ちだと文字間が開き過ぎてタイムアウトしてた感じかと。

改めてシリアルコマンドで色々試した結果、
ファイルフォーマットの問題以外は全て解決出来る事が判明。
DFR0745がしゃべる件は、「PROMPT」というパラメーターでON/OFF可能でした。
データーシートには、このパラメーターの意味が書いてなかったので、
実際に動かして確かめるしかなかったわけですが、
もう少し解り易く書いて欲しかったところですが、まぁ中華製ですし(笑)

何にせよ、シリアルコマンド制御で使うには、何等かのマイコンが必要となります。
APR9600基板からの置き換えという観点だと、ちと手間が増えてしまいますね。 

2025年8月3日日曜日

キャパシター・アイソレーター

今回は ちょっとした小ネタ基板です。

音響関連で ちと必要になりそうだったので作っておいた基板です。 
名称の通り、コンデンサーを噛ませて直流的に分離する為の物です。
回路は以下の通り。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

部品の定数が入っていませんが、用途に応じて設定する為です。

コンデンサーだけというのも能が無いので、抵抗も少々載せておきました。
負荷抵抗機能や ちょっとしたレベル変更なんかも可能になります。

入出力はコネクターにしてますが、電線直付けも可能です。

以下は基板の実物。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイズは40.64mm角で、 30mmピッチで固定穴を付けておきました。

C1~C8は5750サイズです。
これはPMLCAPを載せる想定だからです。
用途によっては100μF位の容量が必要になる可能性を考慮すると、
使用できるコンデンサーは かなり限られてしまいます。

DCバイアスが掛かっている回路なら電解コンデンサーで足りるでしょうが、
DCバイアスが無い場合は ちとやっかい。

無極性電解コンはノイズ等の観点から避けたいですし、
大容量積層セラミックコンも音質的に避けたいところ。
そうなるとフィルムコンを選択したい感じですが、
大容量のフィルムコンはお手軽に入手できません。
PMLCAPであれば16V耐圧で22μFという製品が存在するので、
これを4個パラにすれば88μになります。
これがこの基板の上限容量ですね。

もちろんそんなに容量が要らない場合は、必要に応じて減らせばOK。
63V 2.2μFというPMLCAPが存在しますので、
それを1個だけ載せれば、最小容量になります。

写真だとPMLCAPのパターンが4つしか見えませんが、
裏面にも実装箇所があります。 

 

R1は負荷抵抗を想定していて2W~3Wの酸金抵抗を実装可能です。
その他の抵抗は1608もしくは2012サイズになっています。
抵抗による機能が不要な場合でも、R2とR3には0Ω抵抗を載せる必要があります。 

 

リード部品が入手可能ならバラックでも組めてしまう代物ですが、
先に書いた様に大容量のフィルムコンの入手が難しい為、
入手の容易なPMLCAPを使う前提で作った基板です。

あくまで自分用で、頒布する予定も無い為、鉛ハンダ基板です。
こんな代物でも欲しいと思われた方、連絡頂ければ対応いたします。