2025年8月13日水曜日

レベル変換基板について

先日、Xにて「ラズパイのI/Oは3.3Vだから、5Vデバイスを繋ぐ際はレベル変換が必要だよ」という書込みを見かけた。
これはとても大事な話なのだが、ビギナーの方はスルーしがち。
しかしこの対処を怠ると、原因不明の謎動作が起きたり、
最悪の場合 破損が発生したりするんですね。

 

先のXの書き込みでは、中華製?と思われるレベル変換基板を使用していました。 
写真を見る限り、MOS-FETを使った双方向レベル変換基板っぽい。

この方式の変換基板は動作の巧みさゆえに結構話題になり、
瞬く間に変換基板のキットがあちこちで販売される状況になりました。
かく言う私も設計までは完了させ、基板を作るかどうか検討したものです。
(結果的に基板化は見送りましたが)

 

今回の話は ここからが本題。

このFETを使った双方向レベル変換回路、 電源と変換したい信号線を繋ぐだけなので、
非常に扱いが楽なのがメリット。
そう聞くと、ビギナーにぜひお勧めしたい一品と思われそうですが、
ちと注意点があるのです。

単にそれっぽく信号の電圧が変わってくれるだけなら、これで構わないのですが、
専用のレベル変換ICを使った場合の様な電圧レベルを期待する場合、
この方式の変換基板を使ってはいけないのです。

 

一応、この双方向レベル変換回路の動作を説明しておきましょう。
と、ここで私が解説すると、結構なボリュームになってしまうので、
Digi-Keyさんの資料を紹介させていただきます。 

動作原理 

いやほんと、なかなかに上手い回路だなと感心するわけですが、
世の中そんな美味しい話ばかりじゃない!!(笑)

この変換回路の要注意点を簡単に纏めますと、

1.ローレベル時は信号出力デバイスが全ての電流を吸う事になる

  この変換回路には+電源を供給するけれども、GNDへ繋がる箇所がありません。
  これは、信号がローレベルになる時は、信号を出してるデバイスが、
  各部を流れる電流全てを吸ってるからなんですね。

  ロジックICでの変換の場合、I/Oピンの入出力電流なんて
  ほぼ気にする必要がありません。
  特殊なICを使わない限り、流れる電流は微小だからです。 

  しかしこの双方向変換回路の場合は ちと注意が必要です。
  2個存在するプルアップ抵抗の値によっては、結構な電流が流れるからです。

2.ローレベル電圧が0Vから若干浮く

  ロジックICでの変換の場合、ローレベル時の電圧はICに規定されていて、
  当然問題にならない電圧になっています。

  ではこの双方向変換基板の場合は、上記よりも少し電圧が上がるんですね。
  具体的には下記の電圧になるんです。

  ローレベル電圧=信号出力デバイスのローレベル電圧+FET部のドロップ電圧

  注目はFET部のドロップ電圧です。
  どちらが出力側になるか次第で、ローレベル時の電流の流れが変わりますが、
  その際、FETのドレイン~ソースを流れるか、内蔵ダイオードを流れるか、
  の2択となるわけでして、どちらの場合でも電圧ドロップが発生します。
  これでローレベル信号を出してるデバイスのピン電圧に加算されちゃいます。

3.動作速度も遅め

  一般的にロジックICの出力というのはトーテムポール出力になっていて、
  HからLもしくはLからHへの変移時、出力段のFETで信号を出します。
  ですので、それなりに高速です。

  この双方変換回路は、基本的にオープンドレイン回路がベースです。
  ですので、HからLへの変移時は まぁそれなりに速度出るでしょうけど、
  LからHへの変移はプルアップ抵抗に依存します。
  従って速度はプルアップ抵抗の値次第なんですね。 
  プルアップ抵抗の値を小さくすればそれなりに速度は出ますが、
  先に書いた電流の問題があるので、抵抗値を小さくするのにも限度があります。

  このプルアップ抵抗値には正解が無いので、
  市販されてるレベル変換基板を使用する際は、
  ブルアップ抵抗の値に留意する必要があるでしょう。

 

とまぁ、こんな感じなのですが、お手軽な様で割と面倒な感じ。
この双方向変換回路を否定するつもりは さらさらありませんが、
私は専用ICでレベル変換することが多いという感じです。 

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