2023年2月25日土曜日

JMMCSCSIアダプターの基板回路解説

 JMMCSCSIとは、TNB製作所のたんぼ氏が開発した、
X68000にてマルチメディアカード(以下MMCと略)を読み書きする為の同人ハードです。

たんぼ氏が作成・公開した接続図を元に作成された物が、
近日頒布予定の「MMCじょい君」です。
JMMCSCSIの接続図に対し、「MMCじょい君」の回路図には各種の補完が追加されています。
ここではその「MMCじょい君」の回路図について解説いたします。

まずは「MMCじょい君」の回路図全体です。



 

 

 

 

 

 

 

 

「JMMCSCSI-ADP」というのは「MMCじょい君」内の基板名です。 

CN1がX68000のジョイステックポートに刺さり、
U1にMMCを挿して使います。
「MMCじょい君」の電源はX68000のジョイステッィクポートから貰います。

 上記回路図にパートの区分けを書き入れたものが これ。









 

赤枠内が電源部、
オレンジ枠内がX68000 -> MMC の信号部、
緑枠内がMMC -> X68000 の信号部です。

ご覧の通り、基本的にはレベル変換回路となっております。
MMCのアクセスにはSPI方式の同期シリアル通信を使いますが、
それは全てソフトウェアにて作成している為、非常にシンプルな回路です。

では次に、各パート毎に解説して参ります。

①電源部







X68000は5Vロジックで動いているユニットに対し、MMCは3.3Vデバイス。
なので、X68000から供給された5Vから、3端子レギュレーターにて3.3Vを生成してます。
入出力差が1.7Vしかない為、ロードロップタイプのレギュレーターが必須です。
もっとも、最近入手可能な3.3V出力のレギュレーターは、ほぼロードロップタイプかと。

出力電流容量についてはMMCの消費電流次第なわけですが、
メーカー間で統一されてはいないので、仕様からの決め打ちは不可能です。
なので、ある程度余裕を見て選定するしかないでしょう。
AP2127は300mAのレギュレーターです。
3.3V × 300mA で、1Wまで出力可能。
MMC1枚くらいなら、これで大丈夫かと思われます。

3端子レギュレーターの両端には4.7μFの積層セラミックコンデンサーが付いてます。
これはレギュレーターの安定動作に必須なので、よく見かけるかと。
必要な容量はレギュレーターにより異なりますが、
AP2127では1μF以上が推奨のようです。
セラミックコンデンサーではDC電圧が加わることで容量が減少するので、
余裕を見て4.7μFを使用しています。

積層セラミックコンデンサーの外側には更に電解コンデンサーも付いてます。
3端子レギュレーター出力側の電解コンデンサーはともかくとして、
入力側の電解コンデンサーC1はX68000からの供給電源変動を吸収してくれるので、
これも必須と言えるでしょう。

なお電解コンデンサーは消耗部品ですので、
定期的な交換が必要と認識されてる方も多いかと。
JMMCSCSI-ADPでは電源用の長寿命品を使用している為、
通常使用している限り、定期交換はほぼ必要無いという認識で大丈夫です。

ぱっと見で、よくわからないと思われるのはFB1かと。
これ、回路記号上はインダクターになっていますが、実際はフェライトビーズです。
直流的にはほとんど抵抗を持たないので、存在しないのと一緒ですが、
高周波信号に対しては抵抗分(正確にはインピーダンス成分)が出てきます。
通常は高周波ノイズ対策として使用するフェライトビーズですが、
非常に安く入手できたので、おまけ的な意味で挿入しておきました。
MMCへのノイズ流入を減らす為ではなく、
MMCから3.3V電源ラインへのノイズを阻止する目的で入れています。
特にMMC挿入時は、結構な突入電流が発生するという話を耳にしています。
FB1が有れば、この影響を少しでも少なくなるかなぁという期待ですが、
FB1だけだとMMCへの供給電圧が不安定になる可能性あるので、
直近に22μFの積層セラミックコンデンサーを付けております。

LED D1は電源部の括りではないのですが、
ジョイステックポートの4番ピンに接続されていて、
X68000側からの操作により点灯/消灯するようになっています。

②X68000 -> MMC 通信部






ここではX68000のジョイスティックポートから出力した信号をMMCへ入力する為の
レベル変換を行っています。
X68000のジョイスティックポートはプルアップ抵抗が付いた8255のポートです。
信号レベルは5VのTTLレベルですが、MMCは3.3Vデバイスですので、
5V信号から3.3V信号への変換が必要というわけです。

このレベル変換を行っているのが東芝のTC7WH17FUです。
これ自体はレベル変換用ICではなく、単なるロジックICです。
このTC7WH17FUには3.3V電源を供給しているので、
MMCに繋がる出力信号は3.3Vレベルとなります。
もろちん3.3V電源の入力部には0.1μFの積層セラミックコンデンサーを
パスコンとして付けてあります。

通常のロジックICですと、3.3V動作の状態で5Vの信号を入力することは出来ません。
しかしTC7WH17FUは入力にトレラント機能を持っているため、
5.5Vまでの信号を入力することが可能です。

TC7WH17FUの入力部はシュミット特性を持っています。
「MMCじょい君」はX68000のジョイスティック端子に直挿しする想定ですので、
信号にノイズが乗ることは少ないと思われますが、
ケーブルを通ってくるような信号の場合はシュミット入力はぜひ欲しいところ。

TC7WH17FUの入力部に付いている10KΩのプルアップ抵抗ですが、
これはレベル変換動作には全く関与しません。
これは信号伝達を安定させる為のものです。
このプルアップ抵抗が無くてもDC的にはX68000内の8255とTC7WH17FUが繋がってる状態です。

しかし今回やりとりするのはSPIの信号、すなわち高速パルス信号です。
そうなると、DC的ではなくAC的にはどうか?という見方が必要になります。

仮にTC7WH17FU入力部のプルアップ抵抗が無かった場合の状態が以下の図。


 

 

 

 

 

 

8255からの出力に応じて流れる電流を書いてるのが緑の線。
15KΩのプルアップ抵抗はX68000内部の物なので、ジョイスティック端子自体には
全く電流が流れていないことが解るかと。

TC7WH17FUに対してはオレンジ色の経路で繋がってはいますが、
電流がほとんど流れずに電圧だけが伝わる、超ハイインピーダンス状態の経路となります。

緑色の経路に対してオレンジ色の経路が極少しであれば実害は少ないのですが、
「MMCじょい君」の場合はオレンジ色の経路の方が圧倒的に長くなります。
これはAC的には非常に不安定な伝送経路となります。
その為、高速パルス信号がきちんと伝わる保証がありません。

ではTC7WH17FU入力部のプルアップ抵抗がある場合は・・・・・・







 

電流経路はここまで延びます。
オレンジ色の経路が全く無くなる訳ではありませんが、
基板上のパターンを短く設計することで、ほぼ問題無いレベルに抑えられます。
これならば高速パルス信号も問題無く伝わります。

 

次にTC7WH17FUの出力側についてです。

出力側にも47KΩのプルアップ抵抗が存在します。
これはMMC側からプルアップ抵抗の挿入を要望されている模様だからです。
(明言口調ではないのは規格書等で明示されてるわけではないからです)
入力側のプルアップ抵抗ほど信号伝達上は重要ではないものの、
TC7WH17FUがC-MOSデバイスである点と、
MMCを抜いた状態では経路がオープン状態になってしまう点とを考慮すると、
静電気対策の観点からもプルアップしておくべきでしょう。

TC7WH17FUとMMC間に22Ωの抵抗が挿入されています。
これは所謂ダンピング抵抗と呼ばれるものです。
これの必要性は・・・・・・・無いです(笑)

正確にはTC7WH17FUだと必要無いという話なのです。
実はJMMCSCSI-ADPでは部品の入手性を考慮し、他の部品も載せられる様になっています。
TC7WH17FUが入手できなかった場合、SN74LVC3G17も載せられることになっています。
ただこのSN74LVC3G17はTC7WH17と比べて、高速動作かつ出力段が強力という代物。
その為、オーバーシュート・アンダーシュートが発生する可能性が十分あります。
するとこれを抑える為にダンピング抵抗が必要になる、という話でした。

TC7WH17FUであればダンピング抵抗無しでも大丈夫だと思うので、
22Ωと言わず0Ωでも良いくらいなのですが、0Ωよりも22Ωの方が安かったので、
そちらにしたという経緯。
ですのでこの値に深い意味はありません。(笑)


③MMC -> X68000 通信部


 

 

 

 

 

ここはMMCからの信号をX68000へ送る為の回路です。 

先に述べたように、MMCから出てくる信号は3.3Vレベルなので、
X68000用の5Vレベルの信号に変換してやらなければなりません。

そのレベル変換を行うのが東芝のTC7SET17FUです。
この石も中身は単なるロジックICです。
電源には5Vを供給しているので、出力信号は5Vレベルになります。
(5V電源の入力部には0.1μF積層セラミックコンデンサーのパスコン付き。)

5V動作のロジックICに3.3Vレベルの信号を入力すると、
入力電圧レベルが規定値に足りず正常動作する保証がありません。
しかしTC7SET17FUは入力レベルがTTLレベルという石ですので、
3.3Vレベルの信号を問題無く受ける事ができます。

なおこのTC7SET17FUもシュミット入力になっています。

TC7SET17FUの前後に有るプルアップ抵抗は、②の回路の際と同意義です。
安定通信には欠かせません。

実はこの回路、非常に 厄介な点が存在することにお気づきかと思います。
X68000内部で、8255の入力部にプルアップ抵抗がありません。
というのも、この端子はシャープが出力用と想定して設計したからなのです。
入力用であればプルアップ抵抗は必須ですが、出力用であれば無くてもOKです。

SPI通信を行うに当たり、ジョイスティック端子に送受信を同時に割り当てるには
この端子を受信に使うしかないので、この形になってしまった次第。

ということで、TC7SET17FUから10KΩのプルアップ抵抗までは安定していますが、
その先の8255まではハイインピーダンス信号線になってしまうため、
安定して高速通信を行うのは難が有るかもしれません。
ジョイスティックコネクターの接触抵抗ですら、敏感に反映されてしまうでしょう。

2023年2月24日金曜日

実験用電源の改修、完了です

 迷走したり、最後にオチが付いたりと、かなり手間と時間がかかった改修作業でしたが、
やっと今朝、終了しました。

最終的な回路は こんな感じ。










先の記事で、-12V系統の平滑に、半波整流を使う旨を書きましたが、
ブリッジ整流+1Ω抵抗で落ち着きました。

3端子レギュレーターが手に入らないので、この回路を再現するのは無理な為、
わざわざ回路図を公開するのは恐縮な感じ。

この回路で ちょっと変わっている点はNJM723を使った可変電圧出力部。
NPNトランジスターを追加して出力電流ブーストを行うのは常套手段ですが、
変わっているのは電圧可変部。

5番ピンへの入力電圧をVRで可変することにより、
出力電圧を変化させています。
すると対する4番ピンには出力電圧が入力されるわけですが、
抵抗で分圧したものが入力されています。

723の応用回路では こんなの見かけないと思いますが、
なぜこんなことをやってるかといいますと、
7.15Vを跨いで、広範囲に電圧を可変させられるようになのです。

一般的な応用回路では、6番ピンから出てくる7.15Vをそのまま基準に使います。
すると、可変領域が7.15V以下の範囲と設計するか、
逆に7.15V以上の範囲で設計するか、の2択になってしまいます。
しかしこの実験用電源では下は2V近く、上は18V位まで出したいということで、
こんな変則的な回路にしました。

NJM723の動作としては、4番ピンと5番ピンど同電圧になるように動きます。
4番ピンに3.3KΩと2KΩによる分圧回路が噛んでいますから、
4番ピンに入る電圧は出力電圧の×2÷(2+3.3) つまり2.65分の1です。

4番ピンと5番ピンが同電圧になるわけですから、
つまり、出力電圧は5番ピンの電圧×2.65ということになります。

VRのみだった場合、5番ピンへの入力電圧は0~7.15Vという範囲になりますから、
2.65倍してやると、出力電圧は0~18.9475Vという範囲になります。

しかし出力電圧が0Vという状態は あまり好ましくないので、
最低電圧を少し持ち上げるようにしています。
それがVRに直列に入れてる470Ωの抵抗です。
この抵抗の効果により、5番ピンへの入力電圧は0.614~7.15Vという範囲になりました。
これを2.65倍してやると、1.6271~18.9475Vという出力電圧範囲になります。
VRのマージンを見て、2~18.5V位が出力範囲という感じですね。

この変則回路で要注意なのは、723の4番ピンと5番ピンの入力インピータンスを
揃えるように設計しないと、723の発熱の原因になるという点。
723が発熱すると基準電圧がドリフトしますから、出力電圧もドリフトしてしまいます。
メーカーの応用回路は この点を考慮している為、
私が使ったような変則回路は避けられているというわけですね。

発熱という観点からは、外付けトランジスターの駆動部も気にしました。
外付けトランジスターはエミッタフォロア回路として動作しています。
エミッタフォロアは入力インピーダンスが非常に高い、と耳にしたことがあるかと。
しかしこれはトランジスターのhfeが十分に高い場合の話。
TTC5200のような大電力用トランジスターの場合、hfeはそんなに高くありません。
なので入力インピーダンスも とても高いとは言えないわけです。

というわけなので、NJC723からTTC5200に向けて、
出力電流に相応したベース電流が流れることになります。
この電流調整は723内蔵の出力トランジスターが行っているわけなので、
723発熱の主因になります。

実際どれくらい流れるのか?という話ですが、せっかくなので実測してみました。
すると、出力電流1Aにつき、NJM723の10番ピン出力は約9mAという値。
つまり5A出力時は約45mA流れてるという計算になります。

1Aに対して9mAという比率はTTC5200のhfeから来てます。
大電力用とは言え、TTC5200は新しいデバイスなので、
わずかではありますがhfeは高めの模様。
hfeが110位出ているので、9mAで1Aをドライブできてるという話です。

余談ですが、改修前に使用していた2SD716という石の場合、
hfeは70位だったと推測されます。
すると1A出力時、723からは14~15mAくらい出ていたかと。

話を戻しますと、45mA程度の電流でNJM723が発熱するの?という疑問ですが、
問題はこの電流値に掛ける電圧値。
NJM723の動作としては12番ピンから入ってくる電源電圧を内部トランジスターで減圧して、
10番ピンから出力します。
10番ピンの電圧は、出力電圧にTTC5200のベース・エミッタ間の差圧を加算したものですが、
ほぼ出力電圧と見なして構いません。
12番ピンの電圧は5A出力時でも約20Vあります。
仮に出力電圧が5Vだとしたら、20-5で、15VがNJM723内でドロップする電圧。
これに45mAを掛けると675mWという値になります。
これはNJM723Dの最大消費電力に近い値ですから、決して少ないとは言えない値です。
なのでNJM723の発熱も考慮しておく必要があるのでした。

更に一捻りして、TTC5200の代わりにダーリントントランジスターを使用してみたら?
確かにダーリントントランジスターであればhfeが高いので、
NJM723の出力電流が かなり減らせそうです。
例えば2SD2083であればhfeは2000くらい期待できそうですので、
これならNJM723の出力電流は5A出力時でも2.5mAくらいで済みそう。

しかし難点がありまして、今回の電源装置では出力トランジスターを2個パラレルで使ってます。
これにより1個当たりの負荷電流を減らしhfe低下を抑えつつ
トランジスター最大電力容量に余裕をもたせています。

ダーリントントランジスターを2個パラレルはさすがに安定動作しないでしょう。
なので、2SD2083を使うならばパラレル使用は止めて1個だけ使う、
というスタンスになるかと。
これなら動く可能性はあるかもしれませんが、今度は負荷電力容量が怪しくなります。
2SD2083の場合、Pcは最大120Wです。
出力電圧3Vくらいで5Aも流す場合を想定すると、Pcの余裕が心もとないです。
そんなわけで、TTC5200パラレルが安全かなという感じです。

 

全体の回路説明に戻りまして、
可変電圧出力と-12V出力間、以外は全て独立しています。
なので、直列に繋いで使用したりも可能。

基板の入出力には、可能な範囲でコネクターを使用しています。
これはメンテナンス性向上の為。
ほんとは全てコネクターに出来れば良いのですが、
ユニバーサル基板を使用している関係上、インチのグリッドに乗らないコネクターは使用不可。
(例えば日圧のVHシリーズなど)
接触抵抗の十分低い物じゃないと、出力電圧に影響が出てしまうわけで、
それらを考慮した結果、低電圧や高電流の箇所はハンダで直付けしています。

各出力には負荷抵抗を入れて有ります。
微小負荷時のレギュレーター動作安定の為と、電源OFF時の電荷抜きの為、
この抵抗は入れておいた方がベター。
ただ、-12V系統に関しては冷却ファンが0.3Aも喰う代物の為、
負荷抵抗は全く無意味になってます。(笑)

可変電圧出力部には、現状メーター式の電圧計が付いています。
今回の改修でデジタル式の電圧・電流計を付けようか、という案も有りました。
秋月電子で扱っている「DE-2645-02」という製品ですね。
これは電圧レンジも電流レンジも、今回の電源にマッチしているので、
可能ならば採用したかったところなのですが、決定的な難点がありました。
それは電流測定をリターン経路で測るという点です。

今回の回路図では、可変電圧出力のGNDは、そのままNJM723の制御部へ繋がっています。
もし「DE-2645-02」を付けようとしたら、
このGNDの途中に「DE-2645-02」を挿入する必要があります。
すると、+12V系統とGNDがコモンではなくなってしまうという問題が発生。
可変出力系統使用時は+12V系統を使用しない、
所謂選択利用スタイルにすれば解決しますが、ちょっと使いにくくなってしまいます。 

というわけで、「DE-2645-02」の使用は諦めたのでした。

 

各出力系統の電流制限及び保護にはサーキットプロテクターを使用してます。
回路図上では「CP」と記載しているものです。
3端子レギュレーターであれば自身に過電流出力保護が入っているので、
それだけで十分じゃないか?という声もありますが、
なるべく外部の保護機構を優先使用する方が好ましいと私は考えます。
また、可変電圧系統についてはNJM723の電流制限機能を使っていません。
これは要調整項目になってしまうからです。
この実験用電源では経年変化を考慮し、無調整を基本としています。

そのサーキットプロテクターですが、ちょっと変わった位置に挿入されてると思いませんか?
可変電圧系統は出力端に挿入されてるので、わかりやすい位置だと思いますが、
3端子レギュレーターを使用している系統3つについては、
レギュレーターの前にサーキットプロテクターが入っています。
これはサーキットプロテクターの電圧降下に対する対処です。

サーキットプロテクターは通過する電流を熱に換えて動作しますので、
どうしても通過抵抗が存在してしまいます。
数Aクラスの電流となると、この抵抗分による電流降下が無視できません。
2Aのサーキットプロテクターだと定格値が0.235Ωだそうです。
つまり2A通電時、0.47Vの電圧降下が起こるわけです。
5V系統でこの電圧降下は非常に問題です。
というわけで、レギュレーターの前に挿入されているのでした。
この位置に挿入された場合、レギュレーターの動作電流分も含まれてしまいますが、
出力電流に比べると微々たる値なので、無視して構わないでしょう。

可変電圧系統は順当に出力側に挿入しているわけですが、
当然電圧降下も発生しているので、電圧計の接続位置を注意する必要があります。

2023年2月23日木曜日

TE純正圧着ペンチの具合

 改修中の実験用電源、圧着端子が到着しまして、これで部品が揃いました。

ほんとは今日、秋葉に映画を観に行く予定だったのですが、
電源の改修作業を続行です。
(早く片付けないと他の作業が進められないので)

そちらについてはまた改めて書くとして、今回の本題へ。

この実験用電源ではTEの「2-520184-2」という圧着端子を使用しています。
AWG#20番線用のファスタンタブです。

この端子は汎用の圧着ペンチでは具合が悪い為、
専用ペンチである「58078-3」を使用して圧着します。

このペンチ、以前から手元に在ったものの、
「2-520337-2」という旗型の端子でしか使用してませんでした。
その為、一般的なストレート形状のタブ端子を圧着するのは今回が初めて。

てなわけで、「見せてもらおうか、TE純正の圧着ペンチの威力とやらを・・・」とか
謎なセリフを呟きながら作業を開始。

ん~~、圧着端子が嵌らない??

悩むこと小一時間、「あれ?ロケーターが逆さまじゃね?」

ロケーターが上下逆になっていました。
インチの六角レンチなんて持っていないので外せないなぁと思いきや、
くるくる回る仕様になっていたので、180度回転させて解決。

これで圧着端子が本来に位置に来るようになっ・・・・・・・・た?
なんか微妙に収まりが悪いです。
圧着コマと端子の圧着部が微妙にズレてる感じ。
もう少し前に出てくれればジャストフィットなんですが、
ロケーターで止められてるので これ以上は前に出ません。

物は試しと圧着してみたら、力で押し込むような形にはなりますが、一応圧着できました。
でもこれなら、ロケーター無い方が作業性良いかもしれず。

肝心の圧着具合ですが、芯線の方は全く問題無い感じ。
では被覆の方はと言うと・・・・・・・こっちは潰されないんですね。
TEの仕様の模様。

ニチフ等の被覆付き圧着端子を圧着すると、被覆部も成型されて、
電線がホールドされる感じになりますが、
TEの場合、芯線部しか圧着されません。
なので電線に振動が加わったりすると芯線の圧着部に直に力が加わる為、
断線の懸念が出てしまいますね。

これならばPANDUITの圧着端子を汎用ペンチで圧着した方が良いかもしれません。
残念ながらPANDUITの端子は持っていないので比較が出来ませんが・・・・・


2023年2月22日水曜日

改修中の実験用電源の一部の話

 先の書き込みで出力4系統有る旨を書きましたが、
その内の-12V系統についての話です。

 こんなに出力系統が存在するにも関わらず、
単発品なので専用トランスが用意できなかった為、汎用トランスを使用してます。
その為、出力タップの制約を どうしても受けてしまうことになります。

その結果、-12V系統には22.5Vの出力タップを使う事になってしまいました。
普通に考えればDC12V出力用のトランスとなると、
15~18V位の出力品を選択されるかと思います。

それと比べれば22.5Vは数割電圧が高いわけですが、
これで致命的な不具合が起こるか?と言われると、そうとも限りません。
22.5Vに√2をかけると約31.8V。
実際には整流ダイオードの電圧降下も有るので、いいとこ30V位でしょう。

レギュレーターの最大入力電圧が30Vに耐えられるなら、壊れはしないわけです。
しかし当然のことながら発熱は凄いことになります。
特に今回の出力は最大2A。
大雑把に18V×2Aで36Wも発熱することになります。
相当放熱をしっかりしないと、オーバーヒートでレギュレーターが逝ってしまいます。

そんなわけで、なるべくレギュレーターへの入力電圧を下げたいところ。
そこで思いついたのが整流方式の変更。
メジャーなブリッジ整流を使用せず、半波整流を使うことにしました。

しかし、実際に思った通りになるのか、念の為に予備実験をしてみます。

6Ωの負荷をレギュレーターに繋ぎ、12V2Aが最終負荷とします。
トランスのタップは前述した通り22.5V。
整流後の平滑コンデンサーは10000μFを1個入れてます。
あとは整流方式等を変えつつ、レギュレーターの入力部の波形を見て行きます。

まずは比較参考用としてブリッジ整流の場合です。








 

これが入力部のDC波形。
大雑把に27~29V位の波形になってます。
平均で約28Vというところ。

ちなみにAC接続で波形を見たのが以下。








 

ピークtoピークで約1.7V位の波形ですね。

 

では次に、整流ダイオードを変えて 半波整流してみます。

まずはDC波形。








 

当然ながら、リップルの周波数が変わりましたね。
肝心の電圧を見てみると、平均値はほぼ一緒ですが、
リップル波形が大きくなりました。
これも予想通り。

これらの波形はレギュレーターの入力部で測定と前述しましたが、
要注意ポイントは15Vを下回らないか、という点。
12V出力のレギュレーターは入出力電位差が3V以上要求されています。
ということは最低15V入れてやらないと、安定して12Vが出せないんですね。

上の波形、-15V辺りにオシロ入力の0Vをシフトさせてます。
なので、15Vのラインは画面センターの辺りということになります。
波形を見る限り約10V位マージンがある感じ。

リップル波形の拡大が以下。









 

ピークtoピークで約3.8V位でしょうか。

変な高周波ノイズも載っていないので、
このくらいのリップルはレギュレーターがほぼ相殺してくれます。
(完全とは言いませんが)
精密電源ならともかく、一般のDC電源なら問題無いレベルです。

しかし、半波整流にしても僅かしか電圧落ちないのが ちょっと残念なところ。

そこで更に抵抗を挿入してみましょう。
仮に1Ωの抵抗を挿入した場合、2Aで2Vの電圧降下。
もしかしたら2Ωとかでもいけるか??

平滑コンデンサーが10000μですから、
1Ω抵抗と合わせた平滑フィルターの周波数は約16Hz。
リップル低減にも役立ちそうです。

というわけで1Ω抵抗を入れてみた波形がこれ。








 

オシロのSSを撮るのが早すぎで何やら横線1本入ってるのはご容赦を。
しっかり電圧ドロップしてますね。

波形拡大がこれ。








 

ピークtoピークで約3.3V位なので、フィルターの効果が出てる模様。
しかし予想以上に電圧ドロップしてますね。
平均電圧は約18V位のようなので、最低電圧のピーク約16.3Vという感じでしょうか。
一応15Vは上回っているので大丈夫に見えますが、
大元であるコンセントのAC100Vが電圧変動起こして95V位まで下がった場合、
たぶん15Vを切ってしまいそうな雰囲気です。
それを考えると、1Ωの挿入は厳しい模様。
いやぁ、まさかこんなに落ちるとは予想外でした。
やはり予備実験は行ってみるものですね。

ということで、挿入抵抗を0.5Ωに変更して、再度テスト。








 

ご覧通り、平均22V位まで上がりました。

波形を拡大してみると








 

ピークtoピークで約3.5V位でしょうか。
やはりフィルターの効きは甘くなってしまったようですが、致し方無し。

電圧最低値は約20Vなので、これならコンセントの電圧が落ちても大丈夫でしょう。

ということで、0.5Ωの抵抗挿入で確定とします。

まぁ上記は最大負荷の2Aを流した場合の話なので、
実は1Ωでも構わないんじゃないかという疑惑は有りますが・・・・・(笑)

2023年2月21日火曜日

電解コンも到着

 Digi-Keyに注文してた電解コンが到着。
これで実験用電源の基板部品が全て揃いました。

早速実装。










上から見るとスカスカ感がありますね。(笑)
この基板から電線が生えるので、実際には もうちょっと窮屈になります。

ちなみに裏側は こんな感じ。








 

 

電線2本飛んでるのは修正ではないですよ!!(笑)
太めの線なので表を飛ばすのが ちょっと厳しくて、裏面で繋いでます。

今週中には全部材が揃うはずなので、今週末には完成できるかな?

電源改修の進歩

 秋月電子から通販で部品購入3回に飽き足らず、昨日は店舗で部品購入。
如何に細かい仕様変更を加え続けてるかという話。(;;

それはさておき、結構部品が揃ってきたので、組立作業に着手。
と言っても、仮組みに近いニュアンスなのですが。
実際に組んでみて、予想外の不具合が無いかを確認します。

3D-CAD上で設計してるならば、この点はほぼクリアーしてるはずですが、
今回の電源装置は3D-CADどころか、2D図面すら存在してません。

で、何か不具合出たかと言いますと、2個目のトランスの取付穴がNGでした。
既存の穴1つに加え、新規で開ける穴1つで固定する予定でしたが、
新規の穴がゴム足に干渉することが判明。
ゴム足を削ることも考えましたが、トランスの位置を1cmずらすことに。
すると既存の穴も使えなくなるので、新規で穴2つ開けることになりました。

そんなこんなで現状の進歩写真などを。


 








 

これが背面部の内側。
交換品が入手不可な3端子レギュレーター以外は全て新品部品へ。
売り物ではないので、手加工がちと汚いのはご容赦を。
(と言っても、この部分は私が加工したものではないのですが(笑)










 

こっちが背面部の外側です。

六角スペーサーが4本突き出ていますが、これは最終的に冷却ファンが取付きます。
改修前は自然空冷仕様だったのですが、可変電圧出力の強化に伴い、
冷却も強化することにした次第。
秋月電子なら500円くらいでファンが買えるので、大した費用増加でもないですし。

そんなわけで、どんどん先に進みたいところですが、
実はまだ部品が揃っていないんですね。
なのでぼちぼちと進めていく感じに。

2023年2月17日金曜日

実験用電源を改修中

 電子工作を行ってるなら、何かしらのDC電源をお持ちかと。
ご他聞に漏れず、私も自作の電源を使用しております。

なぜわざわざ自作品なんか使っているかと言いますと、マルチ出力品だから。
トランス容量の問題で全出力最大電流での同時出力は無理なのですが、
+5V 2A
+12V 2A
-12V 1A
3~16V可変 5A
の4出力を持っています。

この電源、札幌に居た頃から使用していた代物なので、相当年季入ってます。
以前、小規模な改修を行ったことはありましたが、
全体のメンテは 今まで行ったことがありませんでした。
そこで、ちょっと時間が取れそうだったので消耗部品交換を行おうと、
久しぶりに中を開けてみたわけですが・・・・・・・

電解コンが液漏れしてる!!

いやぁ、やっちまいました。
可変出力の基板上に載ってる出力コンデンサーが逝ってました。
おかけで銅箔パターンも ガッツリ腐蝕。
もう基板も換えるしかない感じです。

改めてよく見てみると、この電解コンは85℃品。
札幌に居た頃は 今ほど入手可能な部品のバリエーションが広くなかったので、
仕方無い選択だったのでしょう。
というか、そもそもこんな長期に渡って使用するとは思ってなかったんですね。(笑)

というわけで、ユニバーサル基板で新たな基板作成も含め、
内容を大幅にリニューアル中です。
ほんとうは各固定電圧系統に使用している3端子レギュレーターも新品交換したいとこですが、
このサンケン電気のレギュレーター、既に廃止品で入手不可!!
これらは続投してもらうしかないです。

今回のリニューアルではトランスを1つ追加します。
これにより、+5Vをフル出力しても、他系統に影響しなくなります。
しかし現在、トランスの入手性が激悪ですね。
幸い、今回は手持ちのトランスが使えたのでラッキーでしたが、
新規で購入する必要が場合、ちと詰んでたかもしれず。

出力端子のジョンソンターミナルも表面が汚れてきたので交換したかったが、
同型の在庫がほとんど無く、見つかっても1本2千円近くする!!
金メッキ品でもないのにこの値段は どうなってるんでしょうね?
全部で8本も使いますから、こんな値段では交換は無理です。(;;

ところで可変電圧系統の制御にはLM723を使用しております。
もちろん外付けトランジスタも加えて。
で、今までの基板ではCANタイプの723を使用していました。
放熱器も付け、なるべく温度変化を最小する為です。

今回、これも交換しとこうかなと思いきや、これも1個2千円近い!!
たかが723ですよ(笑)
さすがにこの値段は無いなと思い、DIP品に置き換えることに。
こっちは1個100円でした。

昨日・今日と到着した部品を元に配置予定を確認。
片ラグで取付予定だった大型電解コンの具合がよろしくない。
正確には片ラグのサイズが足りない。
もっと大きな片ラグが欲しいのですが、入手性に問題有りで、ちょっと難しい感じ。
これは単純に需要減に端を発するメーカーの供給の問題なのかな?

この実験用電源、出力の安全保護としてサーキットプロテクターを使用しています。
ヒューズでも一向に構わないのですが、実験中に飛ばしまくると、
なんとなくヒューズが もったいないかなぁという意向で。

サーキットプロテクターはIDEC製のものを使用しています。
接続部は#250のタブ端子になっていて、ハンダ付けも可という仕様。

ファスタンタブを揃えていなかったので、ハンダ付けで結線していたわけですが、
今回、バラす為に再加熱しておりまして、熱ストレスが気になるところ。
その為、サーキットプロテクターも全て更新することにいたしました。
これだけで6000円オーバーです。(;;

結線ですが、今回はファスタンタブを使用することにします。
#250用のタブ端子ですと、ニチフのTMEDN630809-FAがメジャーでしょうか?
入手性も良いので、私も使用機会が多い代物。
ですがこのタブ端子、1.25sq用なんですね。
裸圧着端子ならともかく、被覆付き圧着端子なので、せいぜい0.75sq位までが守備範囲。

しかし今回の電源、一部を除く主要配線には0.5sqの電線を使用する予定。
するとTMEDN630809-FAでは具合が悪いわけです。
そこでTEの2-520184-2を用意することにしました。
このタブ端子は0.3~0.8sqが守備範囲という代物。
いわゆる細線用という感じです。
ただネックがありまして、専用の圧着工具が必要なのです。

汎用の被覆付き圧着端子用工具には、0.3sqや0.5sq用というコマが存在していますが、
これは汎用規格の丸端子やY端子等用のコマでして、
TEの2-520184-2には合致しないんですね。

被覆付き圧着端子というのは直接導体部を潰さない分、
圧着作業がデリケートな代物。
なので正規の圧着が行えないのなら、むしろ使わない方が安全です。

しかしなんと、手元にTEの2-520184-2用の圧着工具が有るのですよ。
私の所有物ではないのですが。(笑)
なので全く心配無く圧着加工できるわけです。

余談ですが、同様のタブ端子はPANDUITからも出ています。
こちらは形状的に汎用の被覆付き圧着端子用工具で圧着出来そうなのですが、
だれか検証して見る方、いらっしゃらないかな?