2025年6月13日金曜日

X68K電源ユニットのテストベッド

 結構前になりますが、X68K電源ユニット用のダミーロードを作成しました。
これはオーバーホールや修理で、電源ユニットに手を加えた後の動作試験が目的でした。
ではそれで全て揃ったかと言うと、まだ電源ユニット基板を載せるベッドが必要なのでした。

電源基板をケースに収めてから動作試験するならベッドは不要ですが、
それだと基板からわずかな異音が出ていたとしても気づきませんし、
再度基板に手を加えようとすると、まだユニットをバラさなければなりません。

ですのでケースに収める前に、基板の状態で動作確認するのがベターです。

しかしその場合、1つ問題が出てしまいます。
X68Kの電源基板にはFETやレギュレーター等、熱を出す部品が載ってますが、
それはケースに放熱する構造になっているのです。
ですので、そのまま基板の状態で動作させると、
オーバーヒートで部品が壊れてしまいます。

もちろん極短時間であれば支障は無いのですが、
電解コンデンサーの交換を伴う作業だった場合、
電解コンが本来の性能を出すまでの時間は連続稼働させる必要があります。
少なくとも2~3日は欲しいところ。 

そうなると何らかの放熱機構を用意する必要があるわけでして、
その為のテストベッドという話です。 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなり早速ですが、実際に作製したテストベッドでの動作試験風景。 

右側がダミーロードで、左側がテストベッドに載ったX68K電源基板です。 

ケースに放熱する部品は全部で4点あるのですが、
2点は市販の放熱器をビス留めしてまして、
残りの2点にはmeviyで作製したアルミ板金のヒートシンクを付けてます。 
これに92mm角のファンで風を当てて、強制冷却。 

ダミーロード上のファンも、テストベッドのファンも、
アイネックスのCFY-90Sを使用してます。 
これが非常に静かなファンで、2台回っててもオシロスコープの方が
遥かに煩いという状況。
それでいて、それなりに風は送ってくれるので、なかなかバランス良い製品ですね。
ちなみにこのファンの電源もX68K電源から供給してます。

 

来月の20日開催される「つくまた2」にて実物を展示する予定です。
ご興味感じた方、ぜひお待ちしております。 

2025年6月10日火曜日

つくまた2に出展しまーす。

 同人ハードのイベントで、今回で2回目の開催となる「つくまた2」に当選しました。
スペース数より応募の方が多かったので抽選となったそうですが、運良く当選できました。

前回に引き続き、オリジナルのキットを出す予定でして、
今回の新作は「1ゲートロジックIC変換基板キット」です

 

それと、キットとして纏めてはいないのですが、
X68K電源のダミーユニットを展示する予定です。 

これはX68000の電源ユニットをオーバーホール後、テスト稼働させる為のダミー負荷。 
いきなり本体に繋いで動作テストする方も多いようですが、
電源ユニットの異常で本体にトドメ刺したりすると、泣くに泣けないですからねぇ。

本体に繋がず、電源ユニットのみでも動作しますが、
無負荷だと症状が出ない不具合もあり得るわけです。 

そんなわけで作ったダミー負荷なのですが、
あくまで自分用に作ったものでして、他の方の需要は皆無かと(笑)
なのでキットとして出すつもりはないのですが、
もし興味をお持ちの方いらっしゃれば、部品をお出ししてもいいかなと。

当日、コンセントが使用できるようでしたら、実演も行うかもしれません。 

2025年5月19日月曜日

TPS2116のお試し実験

 同人向けハードにて、供給電源の系統切替をやりたくて情報収集してました。

2系統ある入力のどちらかでも供給可能にしたい場合、
一番簡単に思いつく回路はダイオードOR回路ですね。
パッシブ動作なので信頼性も高く、コストも低い良い方法なのですが、
ダイオードのVF分だけ供給電圧が下がってしまうという難点があります。
電圧低下が無視できるような回路であれば構いませんが、
USBからの供給も含む5V回路の場合、とても無視できない値になります。

それともう1つ、ダイオードOR回路の場合、
どちらの入力から供給されるかは入力電圧値で決まります。
入力がA・Bの2系統有ったとして、入力Bに電圧を供給した場合には、
電圧値に関わらず、必ずB側から給電されるようにしたい、
いわゆるプライオリティ動作の機能が欲しい場合、
ダイオードORでは無理なわけです。

 

ということで、出力イネーブル機能付きの理想ダイオードICなんかも試しつつ、
思考錯誤してきたわけですが、ここにきて理想の一品を発見!!
TI製のTPS2116という石です。

この石はまさに、上記の動作の為に作られた石です。

最近出たばかり・・・・というわけではないのですが、
TIの製品は非常に種類が多く、欲しい石を見つけるのに難儀するんですよね。

 TPS2116をデーターシートを確認すると、
ほぼ私が欲しい機能通りの事が書いてあるのですが、
こちらが想定している使い方のケースについては記載がありません。
ですので実際に実物で動作してみることにしました。

 

まず、TPS2116と変換基板を用意。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

この石は0.5mmピッチなので、電線を直結して実験はさすがに無理(笑)

 

変換基板にICを実装したのがこれ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーザー刻印なので非常に視認性が悪い!!
しかし刻印以外で向きを確認する方法が無いという困ったちゃんです。

なんとか頑張って実装できたので、実験作業に進みましょう。

 

まず以下がTPS2116の基本的な繋ぎ。


 

 

 

 

 

 

 

 

入力を自動切替して欲しいので、MODEピンはV-IN1に接続。
PR1は切替動作のスレッショルド電圧を設定するピンですので、
本来は抵抗分圧した値を入力するのですが、
今回は厳密なスレッショルド値の設定は不要なのでV-IN1へ直結してます。
V1オープン時の不安定動作を回避する為、1.2KΩでプルダウンしてます。
STは入力選択状態を表す出力端子ですので、今回のテストでは不使用。

 

まず基本はデーターシートにも記載ある、V1へ5V供給している状態。 



 

 

 

 

 

V2の状態に関係無く、OUTには5Vが出てきます。

上記の状態からV2へも5Vを供給し、次にV1への供給を止めると、
供給源がV2に切り替わってOUTには引き続き5Vが出てきます。

またV1に5Vを供給してやると、供給源がV1に切り替わる・・・・
というのが この石の基本的な動作です。

 

さてでは、V1・V2ともに供給無しの状態からV2へ5Vを供給した場合??







 

これが今回確認したかった内容です。
普通に考えればV2からOUTへ供給されるだけ、と予想できますが、
データーシートには記載が無いんですね。
(データーシート記載は、V1供給からスタートする事例ばかり)

で、結果は予想通りOUTに5Vが出てきました。
つまりV2供給スタートでも問題無いという結論。

 

これ、V2にUSBから電源供給し、V1に外部供給する場合の想定なのです。
外部供給が無い場合はUSBバスパワーで動作するけど、
外部供給がある場合は常に外部供給で動く、というような設計です。

 

それともう1つ、電圧差についても調べてみました。

V2に5.05Vを供給した状態で、V1に5.0V供給した場合の挙動です。


 

 

 

 

 

これも結果は期待通りで、V1に5.0Vを供給すると、
OUTは5.05Vから5.0Vへ下がりました。
理想ダイオードを使った切替回路の場合、
この程度の微小電圧差では切替がうまくいかない場合があるそうなので、
念のために調べてみた次第。


最終結論として、私の期待通りに動いてくれる石だという事が確認できました。
今後愛用していくつもりです。

ちなみに入力系統切替はFETによるスイッチ式なので、
切替の際に僅かな出力電圧低下が起きるので、その点だけ留意が必要ですね。

2025年5月9日金曜日

BNCコネクター取付用の治具

 某組配案件にてパネル固定のBNCコネクターを使用。
複数取り付くのですが、きちんと向きを揃えなきゃならない。 

四角フランジが付いててビス4発で留めるタイプならば問題無いのですが、
今回取り付けるBNCコネクターはナット1個を締めて固定するタイプ。

一応、板金の開口はDカットが施されてるので、
大幅に捻じれて取り付くことはないものの、
穴のアソビのせいで若干捻じれてしまうのでした。

なので手調整で向きをなるべく揃えているわけですが、どうにも効率が悪い。

 

というわけで、治具を考えてみました。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治具自体の傾きを防ぐため、2つのBNCコネクターを跨ぐような構造。
この治具を装着したまま、2つのBNCコネクターのナットを締めればOKなはず。 

これ、どちらもmeviyで見積。

2ピース構成になっていますが、奥の方が治具の本体。
(上図には描かれてませんが、M2.5の皿ビスで合体させます)

加工精度と ある程度の硬度が必要なので、本体はアルミの切削品です。
ステンでも作成は可能ですが、重さの点で作業性が問題なるかも。
3Dプリンターで自作を考える方も多いでしょう。
3Dプリンターでの造形自体は可能だと思います。
しかしABSやPET等で出力した場合、BNCコネクターを締めた際に
コネクターの突起が若干食い込んで、治具が抜けなくなると思います。
そういう意味で、硬度が必要という話なのでした。
無垢のアルミだと懸念が残るので、念のためアルマイト処理もかけています。
ちなみにポチコンで出力するならば3DプリンターでもOKかも?

BNCコネクターが嵌る部分は公差を設定してます。
ネックはBNCコネクターのロック用突起を嵌める溝。
仕様で、公差指定すると切削深さの制限が発生するんですね。
MAX4mmという仕様なので、深さ4mmで設計。

しかしこれだと治具がBNCコネクターの根元まで刺せず、
パネル面から浮いた状態になってしまうので、
前面にスペーサーのような板を付けるという構造になりました。

この前面板は切削ではなく板金で十分。
板金加工で樹脂が選択できるので、ポリカーボネートを選択。
これならBNCコネクターが取り付く板金の表面を傷つける可能性が減りますので、
一石二鳥の構造となりました。

 

気になるのはお値段ですが、通常納期でも、2つ合わせて1万円以下でした。
治具ですから単発の代物です。
それがこの値段で1つから作れるのですから、大助かりですね。


ネジの締め付けトルク

 あるお客さんから請けてる組配案件、全てのネジにの締め付けトルクが指定されています。
専用工具を用意し作業を開始したところ、あるネジで破損が発生。
黄銅製の六角スペーサーをバーリングタップ加工してある鉄板に組付けてる箇所でした。 

指定トルクで締めると一部の物は耐えられるのですが、
大抵の物は六角スペーサーの雄ネジが変形してしまい、
最悪の場合 規定トルクに達する前に雄ネジが潰れてしまいます。

お客さんが設定した締め付けトルクの根拠は、ヒロスギが公開している資料でした。
スペーサーの破断トルク

確かにこの表だと、お客さんの指定値には余裕があるように見えます。
しかしこのテスト、スペーサーの受け側が専用の台です。
六角スペーサーの雄ネジが全長に渡って嵌合するのです。

それに対し今回問題が発生した物はバーリングタップ。
せいぜい2山程度しか嵌合していません。
これなら当然、耐えられるトルクは変わってきますよね。

 メーカーの参考資料を用いるのは良いと思いますが、
実物との状態差異を考慮しなければならないという良い実例でした。

2025年4月29日火曜日

1ゲートロジック変換基板

 以前から告知しておりました、「1ゲートロジック変換基板」の正式発表です。

昨今 かなり幅を利かせてきた1ゲートロジックICですが、
表面実装タイプしか存在しない為、ユニバーサル基板やブレッドボードでの使用には、
ちと難儀する代物でした。
そこで今回の変換基板を作成する事にした次第です。 

 

実装可能な1ゲートロジックICはSOT-353パッケージなどと呼ばれている、
0.65mmピッチの物です。
東芝ですと、USVパッケージと呼称されています。

これを2.54mmピッチ、5ピンのSIP形式に変換するのが当基板です。

 以下が未実装基板の表面


 

 

 

 

 

 

 

 

実装部品は全て表面に載っています。

 

ちなみに以下が裏面です。









 

表面処理は金フラッシュメッキですので、
実装部品とハンダに留意すれば鉛フリー対応も可能です。


下側に5つ並んでいるパッド部は2.54mmピッチの足が付くところ。
ここにマックエイト製CB-1-3を実装します。
パッド中央にスルーホールが存在しますが、これはパッド強化の為で、
スルーホールに部品を差すことはありません。

 

この基板内の回路図は以下の感じ。










 

 

ロジックIC用のパスコンと、プルアップ/プルダウン用の抵抗も実装可能です。
サイズは全て1608です。(抵抗については2012も載せられます)

R1のパッドがアブノーマルな配置になっておりますが、
これはプルアップとプルダウンを実装によって選択可能にしている為です。
以下のようにチップ抵抗の実装位置によって、プルアップとプルダウンを選択可能です。




















 

なお、R2についてはプルアップのみ可能です。

 

実装可能な1ゲートロジックICは大きく3種類に分けられます。

1つ目は2入力ゲートタイプ 。
2つ目は1入力タイプ。
3つ目は3ステートバッファータイプです。

 どのタイプもパッケージ自体は共通で、
1入力タイプのみNCピンが存在するという形なので、
この変換基板で全て対応可能というわけです。

 2入力ゲートタイプを実装した場合、ピン接続は以下の様になります。
(図ではNANDゲートの例になっていますが、ANDやORゲート等も同様です)




 

次に1入力タイプを実装した場合。




 

IN2がNC扱いとなります。

 

 

最後に3ステートバッファータイプの場合。




IN2がゲート端子になります。

 

 

 

この変換基板はキットとして頒布いたします。
頒布品は基板3枚分が1セットです。
以下が内容物。








 

基板は3枚がVカット面付された状態ですので、使用時に各自で分割して頂きます。
※必ず基板分割してから部品を実装してください。
 実装後に分割する場合はVカットカッター等の専用工具を必ず使用してください。

現時点ではピンは5本連結品がが3つ同梱されます。
将来的に15本連結品が1本になるかもしれません。
その際は各自で5本ずつにカットして頂きます。

これ以外の表面実装部品は各自で用意して頂きます。
1ゲートロジックICはピン配とパッケージサイズが合致していれば、
メーカーや種類は問いません。

C1のパスコンは必須ですが、使用するロジックICの種類によって、
容量を調整してください。

R1とR2は必須ではありませんので、必要に応じて実装する感じです。

 

 

基板の作成

以下は実際にこの変換基板を作成したものです。

まず、表面実装部品をハンダ付けします。









 

 

今回実装したロジックICは東芝のTC7SH14FUです。
シュミットトリガー入力のインバーターですので、
使用形態としては1入力タイプになります。
IN2がNCになるので、必然的にR2も不要となります。

C1には0.1μFのチップコンを使用しました。
TC7SHはVHC相当なので、0.01~0.047μF位でも良いかも。

R1は10KΩでプルダウンする様に実装しています。

基板が小さい為、基板を両面テープ等で固定するとハンダ付けが楽でしょう。

 

ピンを差し込みます。










 

 

 

基板を表裏で挟み込む形状になっています。
もし変形していた場合は、ラジオペンチ等で修正し基板を差し込んでください。

ピンは2.54mmで連結されています。
必ず、連結された状態のまま実装してください。
個別に切り離してしまうとピッチが揃わなくなってしまいます。

 

ピンをハンダ付けします。










 

 

 

両面ともハンダ付けします。

 

 

最後にピンを切り離して完成です。










 

 

 

ピンの長さはお好みで構いません。

 

 

頒布について 

現時点での入手方法は直接問合せしかございませんが、
7/20に開催される「つくまた2」へ参加が決まれば、
そこで頒布を予定しております。

2025年4月10日木曜日

トルクレンチ選びで四苦八苦

 各部の締め付けにトルク指定が有るという組配案件が来ました。

当方も元請けさんもトルク管理案件を手掛けたことは無いので、
トルクレンチは持っていない為、そもそも工具を揃えるところからスタート。
ちなみにパナソニックの電動ドライバーは愛用していまして、
これには設定トルクで自動停止する機能があるものの、
トルクレンチよりは精度が落ちる代物なのです。

 

生産工程にてトルク管理を経験されてる方なら お解りでしょうけど、
本来一人で管理・作業を行うものではありませんよね。
しかし悲しいことに当方は一人。
管理と作業を全て行う必要があるのです。

すると問題になるのがトルクレンチの設定管理。
単一のボルトを締め続けるのであれば、一度設定すればOKなわけですが、
今回は複数の種類が存在するので、作業中にトルク設定値を変えなければなりません。

しかし一般的なトルクレンチは目盛線を引いてあって、
それを目安に調整する代物なので、油断すると設定ミスの確率高し。
なのでトルクテスターで設定値の確認まで行うのがセットなのでしょうが、
このトルクテスターが また高価なんですよね。

 

そんなわけでどうしたもんかと熟考していたわけですが、
直読式なら絶対とは言えないものの、ミスの可能性は減らせるという結論に。

トルクドライバーについては、KTC製のGLKシリーズを選択。
デジタル式なのでトルクが直読できます。
お値段も安いとは言いませんが、まぁ手が届くレベル。

トルクドライバーが使用できない箇所についてはトルクレンチの出番。
これがちと難儀していました。
全般的に指定トルク値が小さい為、工具の選択肢が少ないんです。

弱トルクのレンチだと東日製が割と幅を利かせてる雰囲気ですが、
東日のトルクレンチは先に書いた目盛式。
なのでトルクテスターが無いと厳しいんですよね。

結局、 TONE製T8D6という製品をチョイス。
これはデジタル式ではないのですが、設定値が直読できる様になってます。
これならトルクテスター無しでも行けそう。
お値段もお手頃です。

ただ、このT8D6の範囲値未満の指定トルクも存在するので、
それをどうするか 引き続き思案中なのでした。
デジタルタイプのトルクレンチは桁が1つ違うので、手が出せないんですよね。