2020年10月24日土曜日

冶具製作

 某量産品の組立のため、冶具を作成することに。
具体的にはパネルに六角スペーサーを立てる際の位置合わせ用です。

で、その六角スペーサーというのは以下のような感じの配置。


 







見易いように色づけしておきました。
青いボードに、2種類の長さの六角スペーサーをビス留めします。
赤色の物は4mm長、黄色の物は18mm長です。
今回は、これらのスペーサーの取り付け位置に精度が必要。
通常であれば青色のボードの開口穴を皿もみにして皿ビスを使用したり、
穴サイズを小さくすることで六角スペーサーの位置精度を上げることができます。
M3のビスで留めるのであれば、開口穴をφ3.0まで小さくできます。

ところが今回の案件、この取付ボードが先方からの支給品で、
開口穴がφ4.0近い為、上記の方法で対応できません。
なので、冶具を用意するという流れになりました。

更にもう1点やっかいな事がありまして、
4mm長のスペーサーは短すぎて、両端から対向でビスを打つことが出来ません。
その為、長いビスを貫通させるという取付方になります。
具体的には以下の様な形が完成形。









黄色のスペーサーは冶具側から皿ビスで仮留めすればいいだけですが、
赤色のスペーサーは冶具側にビスが飛び出てくる為、
冶具側からスペーサーをビスで仮留めすることが出来ません。

それらを踏まえて検討すると、最初に以下のようなスタイルの冶具が頭に浮かびます。










平板から角柱が4本延びているという形状。
この冶具に取り付ける六角スペーサーをセットしてみたのが以下の図。


 







黄色のスペーサーは裏側から皿ビスで冶具に仮留めしてます。
赤色のスペーサーは穴に差し込んでいるだけで留まっておりません。
この状態で上から対象のボードを載せ、ビスを打っていけば取付完了のはず。

ところがこの形状の冶具には2つの問題点があります。
1つ目として、この冶具は切削加工で作成する必要があります。
削り取る量が多いことから、歪みの心配も出てくるのですが、何より単価が問題に!!
具体的には2万円近くなるんですね。
内容からすると妥当な金額だと思われますが、
この冶具の用途と必要性から考えると、もっと単価を抑えたいところ。

2つ目の問題点として、赤色のスペーサーを差し込む穴形状の加工の問題。
ここは六角スペーサーの位置精度を上げるため、遊びが多いとNG。
ビス留めの際、六角スペーサーの回り止めの役割から、
単純な丸穴というわけにもいきません。
上記の図では、完全な六角形状の掘り込みになっていますが、
現実的には この形状どおりに作成するのは超大変。
特殊加工になる為、加工費も問題になるわけですが、
そもそもmeviyで対応できません。

単純に掘り込みを作るとしたら、普通はNCフライス加工になりますが、
するとエンドミルの直径分、角にRが付いてしまうわけです。









 

 

具体的には こんな形状に。
ちなみに真ん中の丸いのはビス避けの貫通穴です。
この図の角部のRは1.25。
meviyの切削加工での、最小R値です。
当然のことながら、この形状では六角スペーサーが入りません。

そこで六角形状を諦め、四角形状で対応することにしてみました。











この形状の角のRは1.5。
これに六角スペーサーを嵌めてみると・・・・・・・・











こんな感じになります。
短辺側で六角スペーサーの回り止め、長辺側で横位置合わせ。
見ての通り、角のR部も問題になりません。

ということで、とりあえず加工製作可能な形はメド付きました。
あとは単価の問題。
そもそも切削加工で作るので単価が上がってしまうわけです。
ならば板金加工で製作できれば、単価は抑えられるはず。
4本立ってる四角柱の役割を板金で再現できればいいわけですね。
その四角柱の断面を寸法入りで表すと・・・・・・










 

真ん中を通ってる貫通穴に沿って、3mmの掘り込みが有ります。
参考までに、これに4mmの六角スペーサーを差し込んだ状態の以下の図。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この通り、1mmだけ六角スペーサーが飛び出る感じになります。
この断面形状の再現ですが、今回は掘り込み部が3mmという薄すさ。
この厚みだと板金にて製作することが可能なんですね。
掘り込みの下には、別な板金を重ねればいいわけです。
そしてこれらを一番下の板からスペーサーで浮かせれば、必要形状は完成。








具体的には このような形状です。
重ね合わせの固定は皿ビスを使用し、位置精度を上げてます。

ということで、最終的な出来上がり形状がこちら。










 

でかい貫通穴が有りますが、これは冶具の軽量化と、
指をかけて持ちやすくするためのもの。

板金は全部で3種類となるわけですが、これで総額が2/3になりました。
ここまで落ちれば いいところかと。

ネックは4mm長の六角スペーサーを差し込む四角穴の寸法精度。
一般的に、板金加工は切削加工よりも精度が劣ります。
それがどのくらい影響するか、現物を見てのお楽しみというところ。
万が一 加工寸法を修正する必要が出た場合、
四角穴が開いてる板金4枚を交換するだけで済むのが、このタイプのメリットですね。

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