2023年2月24日金曜日

実験用電源の改修、完了です

 迷走したり、最後にオチが付いたりと、かなり手間と時間がかかった改修作業でしたが、
やっと今朝、終了しました。

最終的な回路は こんな感じ。










先の記事で、-12V系統の平滑に、半波整流を使う旨を書きましたが、
ブリッジ整流+1Ω抵抗で落ち着きました。

3端子レギュレーターが手に入らないので、この回路を再現するのは無理な為、
わざわざ回路図を公開するのは恐縮な感じ。

この回路で ちょっと変わっている点はNJM723を使った可変電圧出力部。
NPNトランジスターを追加して出力電流ブーストを行うのは常套手段ですが、
変わっているのは電圧可変部。

5番ピンへの入力電圧をVRで可変することにより、
出力電圧を変化させています。
すると対する4番ピンには出力電圧が入力されるわけですが、
抵抗で分圧したものが入力されています。

723の応用回路では こんなの見かけないと思いますが、
なぜこんなことをやってるかといいますと、
7.15Vを跨いで、広範囲に電圧を可変させられるようになのです。

一般的な応用回路では、6番ピンから出てくる7.15Vをそのまま基準に使います。
すると、可変領域が7.15V以下の範囲と設計するか、
逆に7.15V以上の範囲で設計するか、の2択になってしまいます。
しかしこの実験用電源では下は2V近く、上は18V位まで出したいということで、
こんな変則的な回路にしました。

NJM723の動作としては、4番ピンと5番ピンど同電圧になるように動きます。
4番ピンに3.3KΩと2KΩによる分圧回路が噛んでいますから、
4番ピンに入る電圧は出力電圧の×2÷(2+3.3) つまり2.65分の1です。

4番ピンと5番ピンが同電圧になるわけですから、
つまり、出力電圧は5番ピンの電圧×2.65ということになります。

VRのみだった場合、5番ピンへの入力電圧は0~7.15Vという範囲になりますから、
2.65倍してやると、出力電圧は0~18.9475Vという範囲になります。

しかし出力電圧が0Vという状態は あまり好ましくないので、
最低電圧を少し持ち上げるようにしています。
それがVRに直列に入れてる470Ωの抵抗です。
この抵抗の効果により、5番ピンへの入力電圧は0.614~7.15Vという範囲になりました。
これを2.65倍してやると、1.6271~18.9475Vという出力電圧範囲になります。
VRのマージンを見て、2~18.5V位が出力範囲という感じですね。

この変則回路で要注意なのは、723の4番ピンと5番ピンの入力インピータンスを
揃えるように設計しないと、723の発熱の原因になるという点。
723が発熱すると基準電圧がドリフトしますから、出力電圧もドリフトしてしまいます。
メーカーの応用回路は この点を考慮している為、
私が使ったような変則回路は避けられているというわけですね。

発熱という観点からは、外付けトランジスターの駆動部も気にしました。
外付けトランジスターはエミッタフォロア回路として動作しています。
エミッタフォロアは入力インピーダンスが非常に高い、と耳にしたことがあるかと。
しかしこれはトランジスターのhfeが十分に高い場合の話。
TTC5200のような大電力用トランジスターの場合、hfeはそんなに高くありません。
なので入力インピーダンスも とても高いとは言えないわけです。

というわけなので、NJC723からTTC5200に向けて、
出力電流に相応したベース電流が流れることになります。
この電流調整は723内蔵の出力トランジスターが行っているわけなので、
723発熱の主因になります。

実際どれくらい流れるのか?という話ですが、せっかくなので実測してみました。
すると、出力電流1Aにつき、NJM723の10番ピン出力は約9mAという値。
つまり5A出力時は約45mA流れてるという計算になります。

1Aに対して9mAという比率はTTC5200のhfeから来てます。
大電力用とは言え、TTC5200は新しいデバイスなので、
わずかではありますがhfeは高めの模様。
hfeが110位出ているので、9mAで1Aをドライブできてるという話です。

余談ですが、改修前に使用していた2SD716という石の場合、
hfeは70位だったと推測されます。
すると1A出力時、723からは14~15mAくらい出ていたかと。

話を戻しますと、45mA程度の電流でNJM723が発熱するの?という疑問ですが、
問題はこの電流値に掛ける電圧値。
NJM723の動作としては12番ピンから入ってくる電源電圧を内部トランジスターで減圧して、
10番ピンから出力します。
10番ピンの電圧は、出力電圧にTTC5200のベース・エミッタ間の差圧を加算したものですが、
ほぼ出力電圧と見なして構いません。
12番ピンの電圧は5A出力時でも約20Vあります。
仮に出力電圧が5Vだとしたら、20-5で、15VがNJM723内でドロップする電圧。
これに45mAを掛けると675mWという値になります。
これはNJM723Dの最大消費電力に近い値ですから、決して少ないとは言えない値です。
なのでNJM723の発熱も考慮しておく必要があるのでした。

更に一捻りして、TTC5200の代わりにダーリントントランジスターを使用してみたら?
確かにダーリントントランジスターであればhfeが高いので、
NJM723の出力電流が かなり減らせそうです。
例えば2SD2083であればhfeは2000くらい期待できそうですので、
これならNJM723の出力電流は5A出力時でも2.5mAくらいで済みそう。

しかし難点がありまして、今回の電源装置では出力トランジスターを2個パラレルで使ってます。
これにより1個当たりの負荷電流を減らしhfe低下を抑えつつ
トランジスター最大電力容量に余裕をもたせています。

ダーリントントランジスターを2個パラレルはさすがに安定動作しないでしょう。
なので、2SD2083を使うならばパラレル使用は止めて1個だけ使う、
というスタンスになるかと。
これなら動く可能性はあるかもしれませんが、今度は負荷電力容量が怪しくなります。
2SD2083の場合、Pcは最大120Wです。
出力電圧3Vくらいで5Aも流す場合を想定すると、Pcの余裕が心もとないです。
そんなわけで、TTC5200パラレルが安全かなという感じです。

 

全体の回路説明に戻りまして、
可変電圧出力と-12V出力間、以外は全て独立しています。
なので、直列に繋いで使用したりも可能。

基板の入出力には、可能な範囲でコネクターを使用しています。
これはメンテナンス性向上の為。
ほんとは全てコネクターに出来れば良いのですが、
ユニバーサル基板を使用している関係上、インチのグリッドに乗らないコネクターは使用不可。
(例えば日圧のVHシリーズなど)
接触抵抗の十分低い物じゃないと、出力電圧に影響が出てしまうわけで、
それらを考慮した結果、低電圧や高電流の箇所はハンダで直付けしています。

各出力には負荷抵抗を入れて有ります。
微小負荷時のレギュレーター動作安定の為と、電源OFF時の電荷抜きの為、
この抵抗は入れておいた方がベター。
ただ、-12V系統に関しては冷却ファンが0.3Aも喰う代物の為、
負荷抵抗は全く無意味になってます。(笑)

可変電圧出力部には、現状メーター式の電圧計が付いています。
今回の改修でデジタル式の電圧・電流計を付けようか、という案も有りました。
秋月電子で扱っている「DE-2645-02」という製品ですね。
これは電圧レンジも電流レンジも、今回の電源にマッチしているので、
可能ならば採用したかったところなのですが、決定的な難点がありました。
それは電流測定をリターン経路で測るという点です。

今回の回路図では、可変電圧出力のGNDは、そのままNJM723の制御部へ繋がっています。
もし「DE-2645-02」を付けようとしたら、
このGNDの途中に「DE-2645-02」を挿入する必要があります。
すると、+12V系統とGNDがコモンではなくなってしまうという問題が発生。
可変出力系統使用時は+12V系統を使用しない、
所謂選択利用スタイルにすれば解決しますが、ちょっと使いにくくなってしまいます。 

というわけで、「DE-2645-02」の使用は諦めたのでした。

 

各出力系統の電流制限及び保護にはサーキットプロテクターを使用してます。
回路図上では「CP」と記載しているものです。
3端子レギュレーターであれば自身に過電流出力保護が入っているので、
それだけで十分じゃないか?という声もありますが、
なるべく外部の保護機構を優先使用する方が好ましいと私は考えます。
また、可変電圧系統についてはNJM723の電流制限機能を使っていません。
これは要調整項目になってしまうからです。
この実験用電源では経年変化を考慮し、無調整を基本としています。

そのサーキットプロテクターですが、ちょっと変わった位置に挿入されてると思いませんか?
可変電圧系統は出力端に挿入されてるので、わかりやすい位置だと思いますが、
3端子レギュレーターを使用している系統3つについては、
レギュレーターの前にサーキットプロテクターが入っています。
これはサーキットプロテクターの電圧降下に対する対処です。

サーキットプロテクターは通過する電流を熱に換えて動作しますので、
どうしても通過抵抗が存在してしまいます。
数Aクラスの電流となると、この抵抗分による電流降下が無視できません。
2Aのサーキットプロテクターだと定格値が0.235Ωだそうです。
つまり2A通電時、0.47Vの電圧降下が起こるわけです。
5V系統でこの電圧降下は非常に問題です。
というわけで、レギュレーターの前に挿入されているのでした。
この位置に挿入された場合、レギュレーターの動作電流分も含まれてしまいますが、
出力電流に比べると微々たる値なので、無視して構わないでしょう。

可変電圧系統は順当に出力側に挿入しているわけですが、
当然電圧降下も発生しているので、電圧計の接続位置を注意する必要があります。

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