前回の記事で書き漏れが有った為、補足いたします。
前回、電圧レベル変換の方法についてお話しいたしましたが、
私が今回採用したのは3番目の「非同期シリアル信号変換」です。
その際、専用のレベル変換ICを使用する他にも、
ディスクリート部品で変換回路を組む事も可能と書きました。
実際、今回私が設計した回路ではディスクリート部品にて変換を行っています。
3.3V信号を1.8V信号に落とすのは抵抗分圧だけで済むので、
全く難しいことはありません。
注意するとすれば分圧回路で使用する抵抗の値。
抵抗値を上げると差動レシーバーの出力部の電流負荷は軽くなりますが、
マイコンの入力インピーダンスが低かった場合、電圧レベルが不足してしまいます。
抵抗値を下げるとマイコンの入力インピーダンスの影響は減りますが、
差動レシーバー出力の負荷が重くなってしまいますので、
双方のパランスを見ながら抵抗値を決める必要があるでしょう。
ちなみに今回は暫定値として、2KΩと2.4KΩの組み合わせにしてみました。
最終的には実働状態で電圧を確認する予定です。
問題は1.8V信号を3.3Vへ上げる部分です。
今回私が組んだ回路は以下のものです。
MOS FETとデジタルトランジスターの組み合わせです。
今回の装置は単発のデモ機のような物なので、
在庫品の中から部品チョイスしています。
MOS FETを使わず、DTA114のみで出力を駆動すると
入力側に3.3Vが印加されてしまうのと、
入力と出力でハイ/ローの極性が逆転してしまうので要注意です。
MOS FETの代わりにデジタルトランジスターを使う手も有りそうですが、
それについては後述いたします。
回路の動作としては入力がハイになるとMOS FETがONします。
するとデジタルトランジスターのベースがローに落ちるので、
トランジスターがONしてコレクタに3.3Vが流れ、出力がハイになります。
デジタルトランジスターには抵抗が内蔵されているわけですが、
この先の説明を話しやすくする為、内蔵抵抗も明記した図を下に載せます。
今回使用しているDTA114EUAは10KΩの抵抗2つを内蔵しております。
これでディスクリート部品全てが見える状態になりました。
R3は出力に対するプルダウン抵抗です。
DTA114EUAはPNP型ですので、
これはエミッタフォロア回路ではありませんのでご注意を。
出力をローからハイへ持ち上げるのはトランジスターの役割。
しかしこのトランジスターはローへ引っ張る機能は無いので、
ハイからローへ落とすのはプルダウン抵抗の役割です。
今回は暫定値として2KΩとしています。
抵抗値を上げると消費電力は減りますが、
トランジスターがOFFになった際、ハイからローへの変化が遅くなるので、
実際の波形と信号の速度を鑑みて、抵抗値を決めるのが良いでしょう。
DTA114EUAは3.3Vで駆動される形になります。
デジタル動作ですからトランジスターは飽和状態で動かすわけですが、
飽和度合いが強すぎるONからOFFへの変移に時間がかかるようになるので、
内部抵抗の選定は少し気を遣うと良いでしょう。
デジタルトランジスターの代わりにPch MOS FETを使うという選択肢も有ります。
その方が動作速度は遥かに高速です。
しかしデジタルトランジスターとは異なり、
ゲート周りに抵抗を外付けする必要が出てくるので、
ICを使う方が部品点数の観点から有利かもしれません。
RS-422程度の速度であれば、デジタルトランジスターでも十分と思われます。
RU1J002YNはNchタイプのMOS FETですので、
ゲートに電圧が掛かると、ドレインがGNDへ落ちます。
ゲート電圧が0Vになるとドレインがハイインピーダンス状態になりますが、
ローからハイに持ち上げてくれるわけではありません。
従ってここをハイに上げる為にはプルアップ抵抗が必須です。
その役割をデジタルトランジスターの内蔵抵抗が担っています。
MOS FETとデジタルトランジスターの組み合わせが便利なのはこの点でして、
ディスクリート抵抗を減らすことが出来るのです。
RU1J002YNの代わりにNPNタイプのデジタルトランジスターを使用する案ですが、
以下の2つの理由でMOS FET使用を推します。
1つ目は動作速度が落ちてしまう点です。
先にも述べましたがデジタルトランジスターは飽和領域で動作する為、
ONからOFFへの移行に時間がかかります。
RS-422程度であれば実用可能な速度は出ると思われますが、
MOS FETを使用し、動作速度に余裕を取っておいた方がベターでしょう。
2つ目は動作電圧の問題です。
ここの入力は1.8Vのロジック信号です。
この電圧で高速動作するデジタルトランジスターとなると、
品種選定がかなりシビアになるでしょう。
しかしRU1J002YNのような低電圧動作用のMOS FETならば問題ありません。
その点でも、ここはMOS FETを使用した方がベターと言えるでしょう。
R2はMOS FETのゲート入力抵抗です。
MOS FETは電圧動作なのに抵抗を入れる??
と疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ゲートの入力インピーダンスは非常に高いので、
実際この抵抗にはほぼ電流は流れません。
実はこの抵抗とFETのゲート静電容量とでLPFを構成することで、
FETの発振防止に役立つのです。
ですのでこの抵抗が無くても回路自体は動作しますが、
挿入しておく方が好ましいでしょう。
R1は入力信号に対するプルダウン抵抗です。
今回、ここの入力はPICマイコンへ繋がります。
ブート直後、PICマイコンの各I/Oピンは
プルアップ/プルダウン無しの入力状態になります。
つまりそのままだとMOS FETのゲートがフローティング状態に近くなります。
ノイズ等、何らかの原因でMOS FETのゲートに電荷が入ってしまうと、
一時的に出力がローになってしまいます。
それを確実に防ぐため、プルダウン抵抗で確実にローに落とすようにします。
そもそも何故ブート時に出力がローになるとまずいか、を補足します。
このレベル変換回路を通って差動トランシーバーを駆動するのですが、
マイコンから差動トランシーバーへ行く信号の1つが、送受切替信号です。
これはローになれば受信状態、ハイにすると送信状態となります。
ブート時に基板外に信号が出る状態というのは避けなければなりません。
従ってブート直後は送受切替線をローに保つ必要があるのです。
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