2025年2月20日木曜日

X68K メイン基板の黄色い電解コン問題

 X68Kのメンテ作業にて、消耗部品である電解コンデンサーの交換はよく聞く話ですね。

その中で やっかいなのは、 メイン基板に載っている黄色い電解コンデンサー。
部品番号は製品で異なるので具体的に記載出来ないのですが、
ニチコンのSLシリーズ 6.3V 220μF という代物です。
この電解コンはバックアップ電池からのバックアップ電源系統に入ってます。

このSLシリーズという電解コンは低漏洩型、つまりリーク電流が少ない代物。
電解コンでリーク電流がガバガバ流れてしまえば、
それだけで電池を消耗してしまいますから、ここに低漏洩型を使用するのは当然ですね。

低漏洩型の電解コンデンサーは85℃品の一般形と同等の寿命です。
なので現存するX68Kでは 遥か昔に寿命が切れてしまっていますから、交換は必須。

しかしこのタイプの電解コンは需要が激減してしまってる様で、
各社とも製造を止めていってます。
まだ製造を続けている会社も有りますが、入手はほぼ不可という状況です。

 

実はですね、X68Kシリーズの内、PROのメイン基板には
この電解コンが載っていないんですね。
なんと通常タイプ電解コンが使われているんです。

あれ?と思ってしまいますよね。
なので、具体的な値に踏み込んでみることにします。

X68Kにてバックアップ電源の負荷は2種類。
1つ目はRTCであるRP5C15、
2つ目はSRAMであるHM6264です。

データーシートで確認すると、RP5C15のバックアップ電流は15μA
HM6264についてはX68Kでは低消費電力型が使われているので、
バックアップ時は10μAという値。
ただしX68KではHM6264が2個載っているので、倍の20µAという事になります。

合計すると、35μAですね。


次に上記の電解コンについて。 

  SLシリーズのリーク電流を計算してみると、
  3V × 220μ × 0.002 = 1.32μA という値。

  通常の85℃標準品の電解コンを計算してみると、
  3V × 220μ × 0.01 = 6.6μA という値になります。

リーク電流だけを見ると5倍も差があるので、おっ!!と思ってしまいますね。

 

しかしこれをRTCやSRAMも含めた電流で計算してみると・・・・

  SLシリーズの場合 35+1.32 = 36.32μA
  標準品の場合  35+6.6 = 41.6μA

なんと2割程度しか差がありません。 

これなら、入手性の悪い低漏洩型を無理に探さずとも、
標準品の電解コンで構わないかもしれません。
(実際には85℃標準品ではなく、105℃長寿命品の方が好ましいわけですが)

 

更に申し上げると、昨今は積層セラミックコンデンサーの大容量化が進んでるおかげで、
定格値100µFなんていう代物も容易に入手できるようになりました。
実際、秋月電子では6.3V100μという積セラコンが10個280円で売ってます。 

積セラコンは完全な固体コンデンサーですから、
電解コンのようなリーク電流は発生しません。
(端子間絶縁に絡む僅かな電流は存在しますが)

すると、無理に電解コンを使わなくても、積セラコンでいいんのでは?
という話になってくるんですね。
秋月電子の積セラコンは安価なだけあって、Z品ですので、
実際に見込める容量は半分程度の約50μFです。

220μFを代替するなら4個必要になるわけですが、
そもそもここは厳密な容量が求められる場所ではありませんので、
2個パラ接続の100μFでも実用上は問題無いでしょう。

もし今後、この電解コンを置き換えする場合は、積セラコンをお勧めします。 


最後に1つ、大事な事を。
黄色い電解コンの代替の際に、
OSコン等の導電性高分子電解コンは絶対に使用しないでください。
これらの電解コンはリーク電流が桁違いに多いからです。

2025年2月19日水曜日

X68K 底基板のバックアップ電池

 X68KではRTCとSRAMへ、常時電源供給する為に電池が載っています。
昨今ならばフラッシュメモリーが有るのでSRAMなんか使わないわけですが、
当時はフラッシュメモリーが登場する前だったので、SRAM一択だったんですね。

さてこの電池ですが、X68K ACEまでは2次電池であるニッカド電池が使われてました。
この辺りも時代を感じますね。

それ以後の機種では1次電池であるリチウム電池が使用されています。
最近のPCであればリチウム電池には電池ホルダーが使用されてて、
ユーザーが自分で交換出来るようになっていますが、
当時はユーザーがPCを開封することは想定されておらず、
当然ながらセルフ電池交換は考慮されていませんでした。

その為、X68Kのリチウム電池はタブ付きのハンダ付け用が使用されており、
電池交換作業は基板に手を加える必要があります。

 

交換作業自体の難易度は さほど高くありません。
3ヵ所のスルーホールのハンダを除去し、電池を交換して再ハンダするだけです。

一番の問題はリチウム電池の入手性。
タブ付きのリチウム電池は一般人が使う代物ではないので、
そこらにポンポン売ってる代物ではありません。

製品製造の際に消費される事がほとんどですから、
大抵はトレー単位で流通してるので、数個だけ買うのは至難の業だったのです。

 

そんな状況下、ケースで有名なタカチ電機さんが やってくれました!!
タブ付きリチウム電池の個別品を出してくれたのです。

そんなバンバン売れるようなモンではないので、
置いてるお店は少ないかもしれませんが、
ともかくも入手可能なメドが立ったのは事実。
タカチ電機さん、ありがとうございます。

 

X68K Expert等のマンハッタンシェイプ品の底基板に載ってるのは、
タカチさんのCRH2450Nと同等です。
実はタカチさんでは更に容量の多いCRH2477Nという製品も出してまして、
電池の厚みが違うだけなのでX68Kに実装可能だったりします。
もちろん値段も差が有るので、どちらを選ぶかは好みの問題かと。

要確認なのはCompactシリーズです。
わざわざ電池の種類を変えるとは思えないので、
たぶんマンハッタンシェイプ品と同じ電池を使ってると思うのですが、
もし交換される際は現物を確認してから電池を手配される方がよろしいかと。

 

 

最後に1つだけご注意頂きたいお話を。

タカチさんのタブ付きリチウム電池ですが、
初期ロット品は導電スポンジで梱包されて出荷されてる事が判明してます。

当然ながら、これだと保管中にガンガン放電してしまうわけでして、
例えばCRH2450Nとかだと せいぜい5年位で電池が空になってしまいます。

タカチさんもこの問題には気づいたようで、
次のロットからは絶縁スポンジに変わってるそうなのですが、
問題は初期ロットがそのまま流通してる事です。

普通に考えたら問題ある製品は回収すると思うのですが、
それをやっていない様なんですね。
なのでもし、買った電池が黒いスポンジに刺さってた場合、
電池が消耗してる可能性有るので交換対応依頼を検討した方がいいでしょう。

幸い、このタブ付き電池をタカチさんが出したのは割と最近なので、
初期ロットの保管期間も1年経っていないのでは?と思われます。
これならばCRH2450Nでも半分以上は容量残ってると思うので、
交換対応の手間を惜しんで そのまま実装してしまうのも有りかもしれません。

余談ですが、タカチさんのラインナップの内、一番小型のCRH1220なんかは、
半年程度で電池が空になってしまうので、導電スポンジ品は交換対応必須です。
たぶん、初期ロット品は全て電池が空になってしまってるかと・・・・・

 

2025/2/20 追記

 タカチ電機様に交換をお願いしたCRH2477Nが届きました。
スポンジが交換前と同じ物の様に見えたので、開封して確認。
すると、確かに導通の無い、絶縁タイプのスポンジでした。
しかし色味が やっかい。
真っ黒ではなく、ダークグレー色なので、
各々のスポンジを並べてみれば、色の差は明確なのですが、
袋に入ったまま単体で見ると、どっちなのかが判りづらいかも。










梱包のどこかに、ロットが判別できる記載があると良かったのですが・・・・

ジャンクの小型洗濯機

 友人に連れられて、久しぶりにハードオフを訪問。
実用的な中古品から、ヤバい雰囲気が漂うジャンク品まで並ぶ、
ハード屋の琴線を刺激するお店です。

 

色々物色していて、これを千円で発見。


 







 

 

バケツサイズの洗濯機ですね。

用途はかなり限られてるものの、小物をちょこっと洗う程度なら、
手洗いよりは楽になるでしょうという感じ。

で、なぜこれが千円だったかと言いますと、
ACアダプターが無いので動作しないジャンクだったからです。
しかし電源だけの問題で、本体が壊れていないのならば、
なんとかできるはず。

というわけで買ってみた次第。

開封し、本体を見てみると、センターピンがφ2.1のDCジャックの模様。
EIAJコネクターよりも  こっちの方が楽です。

しかし、極性が書いていません。
DC入力は間違い無いので、極性確認は必須。
大抵、センターピンがプラス側なのですが、
そこは中国製ですから、一応疑ってみる必要があります。(笑)

余談ですが、ソニー等の一部メーカーがセンターマイナスで製品を作ってて、
諸悪の根源みたいな言われ方してるのを見かけることがあるのですが、
あれにはきちんとした理由があるのです。
用途によっては、センターマイナスでなければダメな場合があるという話。
それ以上は脱線しすぎるので、気になる方はぜひ自分で調べてみてね。

 

さて、話を戻してまして、極性がケースに書いていないのならば、
中を開けて配線を見るのがてっとり早いわけです。
というわけで御開帳。

中は至ってシンプルで、モーターの機構部と、制御基板が1枚だけ。
DCジャックの配線を確認すると、やはりセンタープラスでした。

ふと基板を見ると、電解コンが3つ載っています。
ここまで開けてますから、ついでにさくっと交換してやることに。

10V100μが1個と、35V220μが2個。
220μの1つは、100μとパラ接続されています。
ならば、100µと330µが1個ずつでも構わないと思うのですが、
ちょっと不思議な設計ですね。(笑)

 

基板の裏側はガッツリと厚めのコーティングが施されています。
洗濯機なので、基板を水から保護する対策がされててもおかしくありません。
そんな大した製品とは思えないので、この点は ちょこっと感心。
しかし基板の表面は無対策なので、結局のところ あまり意味が無い気も(笑)

ちなみにちゃんとしたメーカーの洗濯機の場合、
基板丸ごとポッティングされて完全保護されてたりします。

コーディングを剥がして電解コンを交換。
すると、ケースと干渉するではありませんか!!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

基板の右下に有る電解コン、シルクの位置通りに実装すると、
ケースのリブに当たってしまい、基板が収まらないというオチ。
さすが中国製(笑)
どおりで、交換前の電解コンが、えらくカッコ悪い実装になってたわけです。

他にちょっと気になったのは、どの電解コンも基板に糊付けされてなかったんですね。
モーター機構部からの振動が来ますから、寝かせ実装する場合は、
電解コンを基板に糊付けして固定しないとアカンのです。
電解コン交換の際、KE-348で基板に糊付けしておきました。

 

とりあえず電気周りは これでOKのはず。

実は別な問題も有りました。

底カバー止めビスのボスが折れてる!!

基板やモーター部を覆っている底カバーは、4本のビスで本体に留めてます。
そのビスを受ける為に本体側からボスが立っているのですが、
4本の内2本が折れてるのです。
その為、2本しか効いてません。

元の持ち主が底カバーを蹴ったりしたんじゃないかな?
たぶん、ハードオフ側も気づいてないんだろうなぁ・・・・

ボスの完全修復は、プラリペアを使用すれば可能だと思います。
でもこの製品の場合はボスが非常に長いので、
単に長いビスで留める様にすればOKかと。

ボスの高さは元通りに合わせる必要があるので、
折れてるボス片をドリルで掘って穴を広げ、ビスがスルーで通るようにします。
それを接着剤で元の位置に糊付けします。

あとは長いビスを使ってカバーを留めれば完成ですね。

 

なお、実験用電源から12Vを供給してみたら、ちゃんと動作しました。
秋月電子辺りからACアダプターを買うのも有りですが、
どうするかは 改めて考えることにします。

2025年2月7日金曜日

HR10A用治具

 ヒロセのHR10型コネクターは なぜか私の上位のお客様方に好評。
なもんで、これの加工依頼をぽちぽち頂きます。 

たぶん、小型という点がポイントなのかな?と思ってますが、
裏を返せば加工が大変という話に。

パネルに固定するレセプタクルの方は まだマシなのですが、
ケーブルに付けるプラグの方は結構難儀する代物。

 

その、HR10Aというプラグですが、組立には治具が必要です。
ボディを締め込む際、プラグを何かに差し込んで固定しなければなりません。

当然のごとく、 メーカーから純正の治具が出ております。
しかしこの治具、さほど安くないんですね。

そこで自作することに。


 



全景

 

 

 

 

 

プラグの相手方は、パネル固定用のレセプタクルで十分です。
まぁ、ピン数毎に種類分けが発生してしまいますが・・・・・

3Dプリンターで出力した箱にレセプタクルを付けるだけの構造です。
治具としては これで十分。

 

せっかくレセプタクルを使うのですから、更にもう一捻り。
結線チェック用治具の機能も付加してしまいます。

レセプタクルから線を引き出して、導通チェッカー用のパッドを用意。
これで作製したケーブルのチェックも出来るというわけです。

 

余談ですが、今までお客さんから依頼されるのは、
HR10-7シリーズばかりでした。
HR10の中でも一番小型のシリーズなので、作業難易度が高くてウンザリぎみでした。

しかし今回初めてHR10-10シリーズの加工を受けたのですが、
一段階大きくなっただけで難易度がガッツリ下がりました。
これなら あまり苦にならない感じ。

HR10シリーズを使うなら、シェルサイズ10以上の物をお勧めします。