注文していたICが入荷しました。
これで差動トランシーバー3種が揃いました。
丁度良い機会なので、差動トランシーバーについて、ちょっこっと書こうかと。
差動トランシーバーICは、通常のTTLやCMOS信号を差動信号に変換するもの。
通常の信号線はGNDに対する電圧レベルで信号をやりとりするので信号線は1本ですが、
差動信号は2本の信号線を使って信号をやりとりします。
GNDに対してではなく、2本の信号線間の電圧変化で信号をやりとりするんですね。
その為、電線の数は増えてしまいますが、信号伝達は安定度は抜群。
昔からRS-422やRS-485などで使われてきました。
もっと新しいものだと、USBも差動信号ですね。
さて、今回私が購入したLTC2862とLTC2863はRS-422やRS-485向けの石です。
実はこの他にLTC2864という石も持っていまして、これで3種揃ったと書いた次第。
この3種の違いについて、さらっと書いてみます。
まずこの3種共通としてもトランシーバーICですから、
送信器と受信器が各々1個ずつ入っています。
それを踏まえた上で、個々の話へ。
①ハーフデュプレックス・イネーブル端子有り
ハーフデュプレックスということは、送信器と受信器の差動信号線が、
ICの内部で接続されているという代物。
なのでICから出ている差動信号線は2本だけです。
送信器と受信器の差動信号線が繋がっていますから、
各々同時に動かして通信することは不可能ですね。
その為、送信器と受信器にそれぞれイネーブルピンが有るので、
送信の際には送信器をイネーブルに、受信の際は受信器をイネーブルにして、
送受信を行うことになります。
このタイプは かなりオーソドックスな代物でして、メジャーな石ですとSN75176が有ります。
8ピンタイプのICは、ほぼSN75176互換になってます。
MAX485なんていう石もSN75176互換なわけですが、
SN75176もMAX485も5V動作のIC。
電源電圧だけ注意しましょう。
ちなみにMAX3485は3.3V動作のICですね。
今回私が買ったLTC2862もSN75176とピン互換なのですが、電源電圧は3~5.5V。
つまり3.3Vでも5Vでも、どちらでも使用可能。
汎用性を考慮してストックするには好都合なのです。
②フルデュプレックス・イネーブル端子無し
フルデュプレックスタイプは送信器と受信器それぞれの差動信号線が、
独立してICから出てきてます。
そのまま信号線を独立させたまま相手側まで持っていけば、
送信と受信を完全同時に行うことができるわけですね。
イネーブル端子無しと書いたとおり、①のタイプと異なり、
送信器と受信器は常にイネーブルのままで、個々に停止させることは出来ません。
なのでこのタイプのICはRS-485向けには使えないことになります。
今回購入したLTC2863がこのタイプのICです。
イネーブル端子が無いおかげで8ピンのパッケージに収まっているので、
基板をコンパクトにまとめることが出来るというわけです。
メジャー品は耳にしたことがないので、このタイプはレアなのかもしれません。
なお、LTC2863も3~5.5V動作です。
③フルデュプレックス・イネーブル端子有り
②のようにフルデュプレックス構成でありながら、
①のように送信器と受信器にイネーブルピンが存在するというタイプです。
当然ながら8ピンでは収まらないので、14ピンのパッケージになっております。
送信器と受信器を常にイネーブルにすれば②のタイプと同様に使えますし、
差動信号線をICの外側で繋げれば①のタイプと同様に使うことが出来ます。
そういう意味では3種の中では一番汎用性が高いと言えますが、
パッケージサイズが倍近くなってしまうのが難点ですね。
このシリーズのメジャー品はSN75180らしいのですが、
私はSN75180を使ったことがないので、らしいという表現に。
私がストックしているLTC2864はSN75180とピン互換なのですが、
実は③のタイプのICを選ぶ際は、互換性に要注意。
勘の良い方なら既にお解かりかと思いますが、
このタイプのICは10ピン有れば足りるはずなのに、パッケージは14ピン。
つまり4ピン分がNCやGND等に割り当てられてるのです。
で、この4ピンの割り当てが、一部のICで異なっているんですね。
完全に専用設計するならば気遣い無用ですが、
互換品を考慮して基板設計する場合は、SN75180との比較が重要です。
なお、SN75180は5V動作ですが、LTC2864は3~5.5V動作です。
以上のような感じで3種のトランシーバーICをストックすることにしたわけですが、
最後にもう1つ、全タイプ共通の話を書いておきます。
それは通信データーレート。
差動信号線は基本的にシリアルデーター通信に使われるので、
テーターレートという概念が発生します。
トランシーバーICの定格値以上の速度で通信することは出来ないという話です。
ではなるべく速いICを選んでおけば良いかという、そう単純な話ではありません。
どのタイプのICも、ラインナップを見るとデーターレートの速い物と遅い物が存在します。
これは、遅いものは低級品というわけではなく、フィルターで速度制限をかけているだけ。
逆に言えば、高速品はフィルターがかかっていません。
なんでわざわざそんなことするかと言うと、EMI対策です。
通信速度を上げると、それだけ信号ケーブルからのノイズ輻射が激しくなる上、
ケーブル長も あんまり長くできないという状態になります。
USBとかならともかく、RS-422やRS-485では安定して通信できることが重要なので、
限界ギリギリまで通信速度を上げるような使い方は少ないわけです。
すると、フィルター無しの高速タイプは必要無く、低速タイプで十分という話に。
同じ速度で通信した場合、高速タイプのICよりも低速タイプの方がノイズ輻射少なくなります。
以上を踏まえると、基本的には低速タイプのIC使用が前提で、
必要な場合のみ高速タイプのICを投入する、という選択がよろしいかと。
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