2025年1月5日日曜日

3Dプリンターの歪み

 うちに2台目の3Dプリンターである、Sermoon D1が導入されてから、
既に約3年経過しています。
導入直後は色々トラブルが続出し、1台目の3DプリンターであるidBOXが
手放せない状況でした。

しかしながら現在はSermoon D1がかなり安定し、
idBOXの出番はほとんど無い状況となっております。

しかし、今更という感じではあるのですが、
Sermoon D1で出力した治具が歪んでるという事態が発生。
要対処案件勃発というわけです。


今回の歪みはX軸とY軸の交差角度について。
これは当然ながら90度でなければなりません。

しかし今回出力した治具が、ターゲットの板金パーツと微妙に合わないのが発覚。
設計上は直角になってる箇所が90度からズレていることが判ったのでした。

CAD上の設計データーは当然直角になっているので、
これが90度からズレるのは、出力した3Dプリンターの問題でしょう。

実は以前、下の様な形状を出力し、寸法を測定したことが有りました。








 

縦横20cmの正方形です。
真上から見た状態で、厚みは4mmとなっています。

これを出力し、4辺の長さを測ることで、
出力品の寸法誤差をおおよそ把握することができます。
誤差の原因は複数ありえますが、ABSの収縮による誤差が一番に考えられるかと。

これを基に、今まで出力品の寸法調整を行ってきたわけですが、
残念ながら直角がきちんと出ているかまでは確認していませんでした。

理由は単純で、この正方形の角の角度を正確に測るには、
それなりの道具が必要だからです。

XY軸の交差角度は3Dプリンターの組立精度依存が大きいです。
自分で組立てる場合は、当然留意しなければならないポイント。
しかしこのSermoon D1は組み立て済みプリンター。
当然ながら、ある程度まで調整済と解釈していました。

しかし今回のように、目に見えてズレが確認できたとなると、
改めて交差角度の具合を調べる必要がありますね。

 

では実際に確認方法ですが、先の図のような四角形を出力し、
その角度を測る方法もありますが、測定道具が高い!!
万札が飛ぶ覚悟が必要となっちゃいます。

単に直角になっているかを調べるだけならば、
大工道具でおなじみの角尺を使う手もあります。
これならば5千円程度済みます。
しかしこれだと、直角からズレているのは解っても、
どのくらいズレているかまでは把握できない点に要注意です。


そこで私が使った方法は、まず下の図のものを出力します。







 

 

はい、単純なバッテン形状です。
四角形の対角線の長さを見てやろうというもの。

私が出力したものは、対角の長さが30cmというサイズ。
出力物を実測したところ、対角線長が数mm合いませんでした。

実測値を参考にCADで形状を描いてみたところ、
XY軸が交差角度が約0.4度ズレてる模様。

たかが0.4度か、と言いたいところですが、
20~30cmくらいの出力物だと、これで数mmの歪みが出てしまうのです。
案外バカに出来ません。


おおまかなズレ角度と共に、歪みの寸法も把握できたことで、
どれくらい修正すれば良いのかが目に見えてきました。

さてでは実際にSermoon D1を修正してみることにしましょう。

Sermoon D1はX軸方向のロッドが本体の前後に2本走ってる上に、
Y軸方向のロッドを2本並べたユニットが載っており、
そのユニットにヘッド部が取り付けられております。



 

 

 

 

 

 

 

X軸のロッドは本体フレームにガッチリ固定されているので、
こちらを調整するのはほぼ不可能です。
従って調整するとしたらY軸の方。

ではY軸の傾きを調整するには??
実はこれ、そんなに難しくないんですね。
先にも書きましたが、Y軸ユニットはX軸ロット上に載ってまして、
Y軸ユニットを左右に動かすのは、X軸ロットのすぐ上に有るベルトなんです。

先の写真だと奥側のベルトしか見えてませんが、
手前側のロットの上にもベルトが存在します。
つまり、前後のベルトの位置をズラすことで、Y軸の傾きが変えられます。

わざわざ奥側のベルトに手を付ける必要は無いので、
調整は手前側のベルトを使うことにします。








 

 

3Dプリンター内部から撮った写真です。
Y軸はステッピングモーターに繋がったドライブシャフト1本で駆動されています。
このドライブシャフトの前後にプーリー(赤丸の個所)が取り付けられ、
前後のベルトをそれぞれ動かしています。

前側のプーリーの留めネジを緩め、少し回してやることで、
Y軸の傾きを変えてやることができます。
ただし、Y軸ロットの固定部に力が加わることになるので、
大幅に変更することはできません。
せいぜい5mm位が限度かな。

次に問題になるとしたら、調整位置決めです。
XY軸の歪みを解決したいのですから、
X軸ロットとY軸ロットの交差角度を測りながら調整するのが本筋です。
しかしこれ、現実的ではありません。
専用の治具と、それなりの測定器が無いと測れないからです。

結局、フレームをベースに合わせる感じで妥協することにしました。
X軸ロットが固定されているフレームからの距離を揃えることで、
Y軸の歪みを修正してみようというものです。

ただこれ、フレームが歪んでいないという前提が必要です。

先のバッテン形状の出力で、具体的なズレ寸法が大まかに把握できました。
実際にユニット部とフレームとの距離を測ってみると、
だいたいその数値と合うことが判明。
もしそうなら、フレームはあまり歪んでいないという話になります。

それを期待して、フレームからからの距離を揃えるように、
ユニットの前側位置を微調整してみました。
ちなみに前側ベルトのプーリーは2本のイモネジで固定されていますが、
2本ともあまり強く締められていませんでした。
調整しやすいように、ということだったのかは謎ですが、
本来組立時に1度だけ調整すれば済む箇所ですので、
しっかり締めていて欲しいところです。
(この辺は中華クオリティなのかな)


さていざテスト出力です。
先と同じ、バッテン形状を出力してみます。
すると、ほとんど対角線長誤差が無くなりました。
実勢、ゼロではないはずなのですが、0.5mmも無い感じです。
この位になると、ノギス等の測定器じゃないと正確に測れませんが、
うちにはそんな大きなノギスはありません(笑)

ともかく、各段に歪みが減ったことは間違いありません。
実際に最初に問題になった治具を再出力してみましたが、バッチリでした。

 

 

歪み問題は解決しましたが、ついでもう1つ情報を。

一般的なFFF式プリンターではPLAやABS等の樹脂を使います。
これを200℃位の高温で溶かして造形するわけですが、
その後は常温まで冷やすわけでして、すると当然、冷却収縮が発生します。

収縮が問題ならない用途も存在しますが、
治具等のように寸法精度が必要な用途では問題になってきます。

収縮を見越してCAD上の設計サイズに折り込む手や、
3Dプリンター出力時の造形サイズ倍率を手動変更といった方法で、
対処することも可能ですが、
私も愛用しているPrusaSlicerに、これに対する補正機能が搭載されました。








 

フィラメント設定のモード||アドバンストの項目内に、
上記のような設定が存在します。

初期値は0%ですので、補正値は自分で用意する必要があります。

方法は単純で、各自の3Dプリンターの出力可能サイズ内で、
なるべく大きな四角形を出力し、その寸法を実測して補正値を計算するだけです。

私の場合は20cm角の正方形を出力しました。
ABSでは実測値が約199mmでしたので、補正値は0.5%という結論です。

ちなみにこれ、Polymaker社のPolyLiteABSによるもの。
メーカーや品種が変われば補正値も変わる可能性ありますのでご注意を。

一応念のため、PolyTerraPLAでも測ってみましたが、
実測値で約199.6mmくらいでした。
PLAはABSと比べ、収縮は少ない感じです。
でも折角なので、ちょこっとだけ補正を入れておきました。


上の図ではZ軸方向にも補正値が入っています。
これも当然ながら実測結果に基づいた値を入れる必要があるわけですが、
Z軸方向は被測定物の出力から大変なので、あまりお勧めは出来かねるかも。
一応試してみましたが、手間に対して割りが合わない感じなので、
私はこれ以上深追いしない予定です。

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