2025年4月10日木曜日

トルクレンチ選びで四苦八苦

 各部の締め付けにトルク指定が有るという組配案件が来ました。

当方も元請けさんもトルク管理案件を手掛けたことは無いので、
トルクレンチは持っていない為、そもそも工具を揃えるところからスタート。
ちなみにパナソニックの電動ドライバーは愛用していまして、
これには設定トルクで自動停止する機能があるものの、
トルクレンチよりは精度が落ちる代物なのです。

 

生産工程にてトルク管理を経験されてる方なら お解りでしょうけど、
本来一人で管理・作業を行うものではありませんよね。
しかし悲しいことに当方は一人。
管理と作業を全て行う必要があるのです。

すると問題になるのがトルクレンチの設定管理。
単一のボルトを締め続けるのであれば、一度設定すればOKなわけですが、
今回は複数の種類が存在するので、作業中にトルク設定値を変えなければなりません。

しかし一般的なトルクレンチは目盛線を引いてあって、
それを目安に調整する代物なので、油断すると設定ミスの確率高し。
なのでトルクテスターで設定値の確認まで行うのがセットなのでしょうが、
このトルクテスターが また高価なんですよね。

 

そんなわけでどうしたもんかと熟考していたわけですが、
直読式なら絶対とは言えないものの、ミスの可能性は減らせるという結論に。

トルクドライバーについては、KTC製のGLKシリーズを選択。
デジタル式なのでトルクが直読できます。
お値段も安いとは言いませんが、まぁ手が届くレベル。

トルクドライバーが使用できない箇所についてはトルクレンチの出番。
これがちと難儀していました。
全般的に指定トルク値が小さい為、工具の選択肢が少ないんです。

弱トルクのレンチだと東日製が割と幅を利かせてる雰囲気ですが、
東日のトルクレンチは先に書いた目盛式。
なのでトルクテスターが無いと厳しいんですよね。

結局、 TONE製T8D6という製品をチョイス。
これはデジタル式ではないのですが、設定値が直読できる様になってます。
これならトルクテスター無しでも行けそう。
お値段もお手頃です。

ただ、このT8D6の範囲値未満の指定トルクも存在するので、
それをどうするか 引き続き思案中なのでした。
デジタルタイプのトルクレンチは桁が1つ違うので、手が出せないんですよね。

2025年4月6日日曜日

組配外注の弊害

 組配の新案件の打診を頂いておりまして、見積・打合せの最中。
そこで気づいた点が有りましたので、明記することに。

 

今回の組配案件、ボックス状の電子機器なのですが、
随所に締め付けトルクの指定が存在します。

すると同然、トルクドライバーやトルクレンチを使用する事になるわけですが、
それなりにコストが発生してくるわけです。

通常であれば、設計から上がってきたものを生産技術にて吟味し、
無駄なコストが発生すると思われる箇所は設計変更を依頼して、
いわゆる設計の最適化を行うかと。

 

しかし今回の案件、エンドのお客さんは組配を全て外注している模様。
その為、社内に生産技術部門が存在しません。
なので、上記のような最適化が行われず、外注先に組配の発注が行きます。

外注先が生産技術を代行できれば まだマシなのですが、
発注段階では設計内容が確定している状態。
なので最適化を行うことが不可能なのです。

すると、確定している設計内容に従って組配作業を行う必要があるわけで、
無駄なコストが複数発生してしまう、というわけです。

 

ピンと来ない方もいらっしゃるかと思うので、一例を。

D-subコネクターの固定金具にトルク指定されています。
この金具はインチネジタイプ、#4-40UNCのものです。
すると、六角の外形は3/16インチサイズを想定するのが普通でしょう。
ところが何故か、外径5mmサイズの個所が1箇所混ざっているのです。
(5mmでなければ理由は特に無い箇所)
通常の組配作業であればスルーして構わないとこですが、
このおかげでトルクレンチのソケットを2種類用意しなければなりません。
ちなみにD-subの金具用のソケットって既製品が存在しない模様。
なので特別に作製しなければなりません。
それが2個になってしまうので、無駄なコストアップというわけです。

 

組配を外注頼りする場合は、こんな弊害もあるという点に留意しましょう。

2025年3月28日金曜日

予告:1ゲート変換基板

 先の記事にて記載した「1ゲート変換基板」ですが、
汎用性を高める仕様変更を加え、基板の実物が届きました。

現在ちと取り込み中の為、暫くは手を付けられない感じですが、
4月中には詳細を記載し、リリース可能にいたします。

皆様どうぞよろしくお願いいたします。

2025年3月10日月曜日

1ゲート変換基板(1バッファー版)完成

先の記事で触れたワンゲートロジックの変換基板の設計が完了しました。
やはり、入力のプルアップ/プルダウン抵抗機能付きで行くこと。 

回路的にはこんな感じ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IC1がワンゲートロジック。
回路図内ではインバーターになっていますが、
同パッケージ品ならバッファーも使用可能です。

C1はIC1に対するパスコン。
0.1μFと記載してますが、超高速ロジックを使用する場合には
0.01μFの方がいいかもしれません。 

R1が入力のプルアップ/プルダウン抵抗です。
R1は必須ではありませんので、実装はお好みで。

 

基板の見た目はこんな感じ。


 










 

下側の4つのパッドに、マックエイト製CB-1-3をハンダ付けします。

IC1はSOT-23-5パッケージにしました。
大きい方が実装作業が楽なので。
ただ、昨今はICのシュリンク化が進んでいるので、
このサイズのICがディスコンになりつつある感じ。
入手性が問題になる様でしたら、1サイズ下のパッケージ用の基板も別に検討します。

C1は1608もしくは2012サイズのチップコンが実装可能ですが、
推奨は1608サイズです。

R1のパッド形状が面白い形になっています。
これはプルアップとプルダウンを実装位置で選択するという仕組み。
右寄りに実装すればプルアップ、
左寄りに実装すればプルダウンになります。
適合チップ抵抗は1608もしくは2012サイズです。
チップ抵抗については どちらのサイズでも問題ありません。


キットとして頒布も考えておりますが、
キットに含まれるのは未実装基板とCB-1-3のみです。
ワンゲートロジックIC、チップコン、チップ抵抗は各自で用意して頂きます。

 

ユニバーサル基板やブレットボードにてワンゲートロジックが使えるのは便利なので、
私自身が早々に欲しいと思っている基板です。
近々手配をかける予定でございますが、汎用性を考慮し金フラッシュにする予定。
(これなら鉛フリー対応もOK)
その為、ちょっと金額が大きくなるので、懐具合を見ながら進めております。(笑)

 

3/11追記

IC1はSOT-23-5パッケージの予定と記載いたしましたが、
改めて現状を確認すると、選択肢がかなり厳しい模様。

当方はある程度のストックを持っているので さほど支障は無いものの、
これから購入される方は難儀される可能性が・・・・・

ということで、SOT-25-5ではなく、SOT-353パッケージにしようかと検討中です。
0.65mmピッチなので手付けは少々苦労しますが、
量産するわけではないのですし、何よりICが入手できなければ無意味ですので。

懐が許せば両タイプとも作りたいところですが、
片方だけの場合はSOT-353パッケージ用になりそうな感じです。

 

X68K電源ユニット用ダミーロード その5

 今回は3種類のラスト、Type3です。

と言っても特に新しい内容が有る代物ではなく、
基板部とヒートシンク部が分離していたType2を、1つに合体させたものです。

単にそれだけなのですが、現在製作を進めているのが このタイプ。
見た目はこんな感じ。


 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体型という点ではType1と同じですが、ファンの音が直接耳に入ってしまいます。
ですので静音タイプのファンが必須と言えるでしょう。
とは言え、ヒートシンクを冷やしきれなくなるとマズいので、
現物調整が必要になりそうです。

 

Type2で全体を2つに分けた理由は3Dプリンターの出力サイズでした。
当方所有の3Dプリンターは やや大型ですので、
一般普及品よりは大きめの物が出力可能です。

このType3のベース部は約200×150mm。
当方では出力可能なサイズですが、厳しい方もいらっしゃるかも?

Type2だと基板部が電線に引っ張られてしまう事が考えられるので、
このType3の方が使い易いと思われます。

 

ともあれ、あとは完成後の試運転で、ファンの音の具合次第ですね。

2025年3月9日日曜日

ワンゲートの変換基板

 先の記事に書いたワンゲートロジック専用の変換基板、
とりあえず基板設計は上がったものの、その後 更に手を加えてました。

ロジックの入力にプルアップ抵抗が有ると便利なのでは?
と思いついたので、早速抵抗を追加してみました。
さすがに元のサイズでは収まらず、高さを延ばすことに。
前の基板は高さが8.5mmでしたが、約10mmになってしまいました。

これでバッチリかと思っていたら、CMOSロジックなのだから、
プルアップではなくプルダウンしたいケースも出てくるのでは??
というお告げが脳内に!!

早速プルダウンも可能に修正開始。
しかし、プルダウン抵抗を新たに追加するのは さすがに無理が。
基板サイズを延ばせば載りますが、それは避けたいところ。

通常、プルアップ抵抗とプルダウン抵抗を同時に実装することは無いはず。
(そういう回路も存在しないことはないが、レアケース)
ならばパッドを共用にして、どっちか片方しか実装できないにしよう。

これで基板サイズを変えずに、プルダウンも可能になりました。
パっと見、実装のしかたが解りづらいという難点はありますが、
量産で使う基板ではないので、勘弁して頂けるレベルかと。

PWMファンのドライブと、新変換基板の話

 先日からPWNファンを動かす為の実験を行ってます。
動かす実験と言っても、PWMファンの実物が手元に無いので、
サーミスターとPICのPWM機能を調べるのが主内容ですが。

 

PWMファンはパソコン用ファンでは4ピンタイプと呼ばれている代物。
電源の2ピンと、回転数検知のパルス出力の1ピン、
そしてPWM制御の為の1ピンという構成です。

このPWM制御ピンの具体的なドライブ方法を改めて調べてみました。
以前、WEBで簡単にググってみたところでは、
ファン内部でプルアップ処理されているので、
PWM制御側からはオープンコレクタでドライブすればOK、
みたいな感じで書いてあったんですね。

そこで以下のような回路で考えていました。



オープンコレクタドライブ

 

 

 (※実際の回路で必要となる抵抗等は省略しています)

 

ファンの大手メーカーである山洋電気さんのカタログに
この辺の技術資料が掲載されていました。
それで詳細が確認できた次第。
もしかしたら山洋電気さんのファンだけに適用される規格で、
他メーカーでは違うという可能性はゼロではないかも?

 

山洋電気さん の資料によると、
PWM入力端子はプルアップ&プルダウンされた、
トランジスター受けの入力端子だそうな。

 




ファン内部

 

 

 

 

こういう回路という事ですね。

 

オープンコレクタにてドライブも可能だけど、
トーテムポール出力でのドライブも可能だそうです。
(PWMのパルスは5V振幅と謳われているので、TTLロジックだと厳しいかも)

入出力電流値は約1mAとの規定。
この値ならばPICマイコンのI/Oでも余裕ですね。


 

 PIC直結

 

 

非常にシンプルで良いと思ったのですが、
1つ気になる点が出てきました。

それはコールドブート直後の話です。

コールドブート直後はPICの全I/Oが入力ピンになります。
するとPWM信号線がPWMファン内のプルアップ抵抗の影響でHレベルとなり、
PWMファンがMAX速度で回転することになるんですね。
確かにそんな場面を見かけたことがある気がします。

機械的に何か問題があるか?と問われると問題は無いと思うのですが、
個人的にブート後はMIN速度から起動して欲しいと思いませんか?(笑)

 

そこで いくつかの回路を考えてみました。
要は、PIC側がフローティング状態の時に、
ファンのPWM端子がローレベルになれば良いわけです。

単純に上記のPIC直結式回路にプルダウン抵抗を追加するだけでは厳しいです。
流れ出てくる1mAの電流を吸収して、ローレベルの閾値である0.5V以下に抑える為には、
大きくても500Ωの抵抗でプルダウンする必要があります。
余裕を見るなら330Ωくらいでしょうか。

330Ωのプルダウン抵抗が付いた状態でPICのPWM出力が動作開始すると、
Hレベル時にPICからの出力電流が15mAくらいになってしまうわけです。
PICのI/Oポート自体は25mAくらいまでドライブできるので、
PICが焼けてしまうことはありません。
問題はそこではなくて、15mAものパルス動作を続けているデバイスがあると、
同じ電源下で動作するサーミスターの値に影響が出てしまう可能性があります。
それを避けるためにはサーミスターへの供給電源を分離する、
なんて事になると余計な部品が増えてしまいますね。


私が思いつく もっともベターな方法はCMOSロジックでのドライブです。






この図では一例として、トーテムポール出力のバッファータイプである、
74HC17を使ってみました。
74HCシリーズならば電圧レベル的にも入出力電流値的にもPWMファンに直結可能です。
74HCの入力は高インピーダンスなので、ローレベルに引っ張る場合でも、
せいぜい10K~47KΩくらいのプルダウン抵抗で十分です。
この程度のプルダウン抵抗ならば流れる電流は微々たるものなので、
+5Vの電源系統への影響も無視できるでしょう。 

ではこの回路で・・・・・・と言いたいところですが、
74HCロジックだと最低でも14ピンパッケージになってしまいます。
ロジック1つしか使わないのに、これは邪魔ですよね。

かと言ってワンゲートロジックICは表面実装タイプしか存在しません。
ユニバーサル基板での実験には不向きなわけです。

 

そこで思いつきました。

ワンゲートロジックICの変換基板が有れば便利なのでは?? 

表面実装部品をDIPタイプに変換する基板というのは既に存在していますが、
パスコンも考慮すると専用の方が使い易いでしょう。

電源と入出力ですから全部で4ピン。
DIPタイプのダイオードブリッジみたいな感じになるでしょうか。

それはそれで有りなのですが、変換基板を立ててしまった方がスマートじゃね?
と閃きました。
そのアイディアに基づき、早速基板設計。
すると、だいたい8.5×10mmくらいのサイズに収まりました。
この高さなら十分に実用的ですよね。
厚みは基板と部品の分ですので、2~3mm程度。

想定しているワンゲートロジックICはSOT23-5パッケージで、
2番ピン  ロジック入力
3番ピン  GND
4番ピン  ロジック出力
5番ピン  VDD
というタイプです。
バッファー及びインバーターとしては一般的なスタイルなので、汎用性は高いと思います。

PWMファンの話に使用するなら、東芝のTC7SH17Fなんかが使えます。 


この変換基板は結構重宝しそうなので、近日中に製作予定です。
例の如く同人ハード扱いにするので機会が有れば頒布も考えますが、
現時点では具体的には不明。
気になる方は私まで直接問合せください。

2025年3月8日土曜日

X68K電源ユニット用ダミーロード その4

 前回はType1を解説しましたが、今回は2つ目のType2です。

Type1で十分実用性は有るのですが、ワイメイク性が強い感じ。
meviyで作る板金部品だけで8千円を超えてしまいます。(通常納期の場合)
するとトータルで1万円を軽くオーバーしてしまうことに。

この金額自体は特に高いわけではありません。
むしろ、単発としては安いかもしれません。

しかし業務用途ではなく、趣味用途として見た場合、
もっとお安く出来ないかなぁ?というのが、今回のType2の出発点。

趣味ベースでお安くモノづくり、となると真っ先に思い浮かぶのは3Dプリンター。
3Dプリンターを活用してお安く纏めてみることにします。

 

さて、ではどんな構造にするかから再検討。
趣味用途で3Dプリンターを使うとなると、
ホビーユースで普及している3Dプリンターを念頭に置く必要がありますね。

すると、Type1のような一体構造はサイズ的に厳しそうな予感。
メイン基板部とヒートシンク部を分割してしまえば、
Type1よりはサイズを個々の部品サイズ抑えられます。
そもそもメイン基板とヒートシンク部の間は
抵抗へ繋がる電線と冷却ファンの電源線しか繋がっていないので、分割は容易です。

 

ではまずメイン基板部。

ここは単に、基板を床から浮かせて保持するだけで用は足りますね。
ですので以下の様な部品を設計。







 

 

サイズ的には110×80mm位なので、大抵の3Dプリンターで出力可能でしょう。
素材もPLAで十分と思います。

これにメイン基板をタッピングビスで取付け、
裏側にはゴム足をタッピングビスで取付けし、完成。











さて次はヒートシンク部です。

Type1ではヒートシンクを垂直配置しましたが、
さすがにあの形状のまま奥行きを縮めるのは ちと安定感が悪くなってしまいます。

そこでやむを得ず、ヒートシンクを水平配置することにします。
なお、ヒートシンク上のメタルクラッド抵抗の配置については全タイプ共通です。

思案の結果、決まったのが以下の構造。

まず、このような板金部品を用意します。







 

 

 

これはFANベースという部品です。
ちなみに裏側はこんな感じ。









 

これもやはりmeviyで製作可能です。
というか、こういう板金部品を1個単位で作ろうとしたらmeviyは欠かせません。


まずは このFANベースに冷却ファンを取付けます。
固定はトラスビスとフランジナットのセットにて。
Type1では板金の内側にファンを取付ましたが、
Type2では板金の外側に取付けます。
こうすることで板金の高さが減り、単価が若干落ちます。

冷却ファンの反対面にはファンガードを取り付けます。
これもトラスビスとフランジナットのセットにて。

Type1の時はファンガードと板金、冷却ファンを1本ビスで締めてましたが、
Type2で別々のビスで留める構造になってしまいます。
リブ付きのファンならば、1本のビスで行けるんですけどねぇ・・・・

ともあれ、ここまでで こんな感じに。









 

次に、板金部品の中に抵抗付きのヒートシンクを差し込みます。












裏から見ると こんな感じ。











 

 

ヒートシンクは差し込んだだけで、板金部品とビス留めしてません。

そして、これらを載せるのが、このベース部品。








 

 

3Dプリンターで作る部品です。
サイズ的には150×120mm位なので、大抵の3Dプリンターで大丈夫なはず。
素材はABSかPET辺りがお勧めですが、PLAでも実用にはなるかと。

ちなみに裏側はこんな感じ。












 

先程の板金部品とヒートシンクのセットを、このベース部品に載せ、
長いトラスビスでベース部品・板金部品・ヒートシンクを一気貫通で留めます。












 

最後にゴム足をビス留めします。
ここで使うゴム足は、タカチのA14-6です。
Type1で使ったA21-8だと ちょっと大きすぎな感じ。











 

 

これでヒートシンク部も完成です。











 

前側に謎な突き出しと穴が2個存在しますが、
これは電線類を片サドルで留められるようにと用意したもの。
留めた方がベターですが、まぁお好みかなと。

 

このType2だと、板金部品の費用が半分以下になります。
総額で1万円を切るでしょう。
板金部品を3Dプリンター出力品にすると?という疑問が出ますが、
コの字形状をこの薄さで1発出力するのは まず無理なので、
パーツ分割して組み合わせ、という感じになるでしょう。
すると現在よりゴツくなってしまうので、スマートさに欠けるかもしれません。
私ならば、ここだけはmeviyの板金部品を選択するかなぁ。

X68K電源ユニット用ダミーロード その3

 今回からはユニット全体の組立について触れていきます。

VCC2以外の電源の負荷にはメタルクラッド抵抗を使用します。
大電力用なので高価な抵抗ですが、秋月電子に安価な物が売っているので、
それを利用することにいたします。

当然ながらメタルクラッド抵抗には放熱機構が必要となります。
今回はヒートシンクに取付けし、ヒートシンクをDCファンにて強制空冷します。

ヒートシンクも それなりの値段する代物ですが、
うちには以前いただいた、没品のヒートシンクが有ります。
こんな代物。



 

 

表面

 

 

 


 

 

 

 裏面 



 

 

諸事情で没になり、本来なら産廃ゴミになるはずの物を頂いたという経緯。
その為、既に穴あけ加工済みなのですが、その穴を避ければ良いだけで、
ヒートシンクとしての能力は問題無いわけです。
今回はこれを利用して材料費節約です。

 

メタルクラッド抵抗に合わせ、上のヒートシンクに取付穴を加工します。
アルミ製のヒートシンクなので、加工は割と楽なのですが、注意するとすれば穴位置。

何も考慮せずに位置を決めて穴あけすると、
当然ながらフィンの位置に穴が来る場合があります。
そこそこ太いドリルであれば さほど問題にはならないのですが、
細いドリルの場合、折れてしまう懸念が有るのですね。

そこで今回はフィンの間の谷間部分に穴あけする様に設計。
このヒートシンクのフィンピッチは6mmで、谷間部の隙間は4mmあります。

メタルクラッド抵抗の取付穴が丁度6mmの倍数であれば、綺麗に収まりますが、
当然ながら そんな上手い話は無いわけでして・・・・・
ですので抵抗を斜めに傾けて、取付穴を6mmピッチに合わせます。

そんな感じで取付できたのが以下。






抵抗取付後

 

 

 

 

 

 

見た目としては抵抗の向きが揃っている方が良いわけで、
売り物であれば 当然そうするところですね。
しかし今回は自分用なので、見た目は重視しない方向で行きます。

上の図では、3種類のメタルクラッド抵抗を使っています。
10Wタイプ、25Wタイプ、50Wタイプの3つです。
秋月電子からはメーカー提供の図面が配布されているのですが、これが曲者。
なんと現物と図面が異なるのです!!

特に問題になったのが25Wタイプ。


 

 

 

 







縦寸法はほぼ問題が無いのですが、問題は横寸法。
各穴が1mm以上ズレているのです。
するとトータルで2mm以上のズレになるわけで、これでは全く穴が合いません。

結局、ヒートシンクに追加の穴あけを行い、無事に取付を終えたという経緯。
日本メーカーの抵抗ならば まず考えられない話ですが、
中華製部品ならば ありがちな話ですね。

 

このヒートシンク部と冷却ファン、そしてメイン基板を纏めるわけですが、
最終的に合計3つのパターンを考えました。
以降、順に1パターンずつ解説して参ります。
(ヒートシンクと抵抗については、どのパターンも共通です)

 

まずは1つ目のパターン(Type1)

全体を纏めるベースとなるシャーシが以下の物。







ベース板





 

t1.2の板金加工品で、meviyにて製作可能です。

 

次にヒートシンク部を固定する為のパーツがこれ。






HSステー

 

 

 

 

 

 

これもt1.2の曲げ板金部品で、meviyにて製作可能。
上端はコの字曲げになっていますが、
こういう形状は寸法次第で曲げ機の歯に干渉してしまい、
加工不可となる場合があります。
今回の金具の様に奥行きが広く、曲げ先も短ければ ほぼ大丈夫です。
meviyの場合、干渉を自動チェックして見積時に指摘してくれるので安心ですね。

 

この金具2本をヒートシンクにビス留めし、それをシャーシにビス留めしたのが以下。












あとはシャーシに六角スペーサーを使ってメイン基板を取り付け。
シャーシに冷却ファンとファンガードをビス留め。
シャーシの底面にゴム足をビス留め。

すると以下の様な感じで完成です。


 


















 

 

冷却ファンは92mm角、25mm厚というサイズ。
ヒートシンクの幅が約100mmなので、それに近い最大サイズを選択。
このサイズだと25mm厚の製品がパソコンのケース用として流通しているので、
それを流用することにしました。
山洋電気等の一流メーカー品でも安く入手可能なのです。
しかもケーブルにコネクターも付いてます。

ただ残念なのは、ケース用ファンはどれもリブ無しタイプなのです。
パソコン用のケースファンを購入すると、
大抵、ファン取付用としてタッピングビスが付属してきます。
ところが、少なくとも山洋電気ではリブ無しタイプを
タッピングビスにて固定するのはNG扱いになっています。
(リブ有りならタッピングビス留め可能)

他のメーカーならば大丈夫、ということはないと思われるので、
リブ無しをタッピングビス留めするのは自己責任扱いになると思われます。

取付けの手間を考慮するとタッピングビスを使いたいところですが、
リブ有りのDCファンは高価なので断念し、
リブ無し品をトラスビスとフランジナットで固定しています。

 

ゴム足はタカチ製A21-8です。
このシリーズはエラストマ製の為、ゴムの様な悪影響が発生しません。
取付もビス留めなので、ズレたり剥がれたりという懸念がありません。

 

今回解説したType1のメリットは冷却ファンの騒音
使用者はメイン基板側に居るわけですが、
すると冷却ファンがヒートシンクの陰になるので、
冷却ファンの音がある程度遮られるわけですね。
X68K電源ユニットのテスト時、ファンの音が煩いと、
電源ユニットからの異音が解りにくくなってしまいます。 


最後に板金の材料についての話。
このタイプでは t1.2の曲げ板金を使っていますが、
この t1.2の板というのは一般的に鉄板材で使われる厚みです。
もし上記の板金部品を鉄で作った場合、
塗装なりメッキなりの表面加工が必須となります。

ところがmeviyでは t1.2のステン材を用意しているので、
この板金部品をSUS304で作ることが可能です。

一番安価なのはSUS304(2B)という素材ですが、
見た目がそれなりなので売り物にする場合は要注意ですが、
自分用のツールで見た目を気にしないならば、有用な選択肢となるでしょう。
なお、SUS304へのビス留めはステンビスが必要な点に注意が必要です。

2025年3月6日木曜日

X68K電源ユニット用ダミーロード その2

 前回は全体仕様までを記載いたしましたが、
ここからは実際の製作物についての話です。

 

先の全体回路図の内、ヒートシンク部以外は1枚の基板に纏めます。
既に基板の設計は上がっていて、もう発注済みです。

しかし世の中は便利になったもので、
実物が出来上がる前に、3D-CADによるモデルを見る事ができます。
それがこちら。









これで十分、メイン基板の雰囲気がお解り頂けるかと。
基板サイズに対し部品配置が疎なのは、
大電流を流す為にパターン幅を広めに確保しているからです。

基板奥手にヒートシンク部に繋がる端子台が並んでいます。
ヒロスギ製のHP-03423という製品で、
M3ネジにて圧着端子を止める、基板実装型の端子です。
もちろんサトーパーツ等の一般的な基板用端子台でも問題ありませんが、
手持ちの関係で これを使ったという次第。

端子の右隣にはヒートシンクの冷却ファン用電源コネクターが有ります。
MOLEXの5046-03Aという製品なのですが、
巷に流通しているパソコンのケースファンが そのまま接続できます。
この基板にはPWM制御の機能が無いので、3ピンタイプのファン用です。

基板の左端にはX68K電源ユニットからのケーブルを挿すコネクターが2つ並んでます。
手前は日圧のB6P-VH、奥はMOLEXの5273-02Aです。
コネクター2つに分かれるので、+5Vが10A近く流せるというわけですね。

基板の手前側の左寄りが、X68K電源ユニットの起動スイッチ。
日開のA-12HBを使っています。
これも単に手持ちが有ったからという理由。
X68K電源ユニットの起動操作信号はmAオーダーの電流しか流れませんので、
できれば微小電流用スイッチの方が好ましいわけです。
その点では日開のAシリーズもしくはBシリーズがお勧めです。
このA-12HBの端子穴は2.54mmピッチになっているので、
ピッチが合うものならば代用も可能です。
秋月電子扱いならば、2MS1-T2-B4-M2-Q-E-Sなんかも合うでしょう。
しかしこれは微小電流タイプではないので、その点は留意する必要があります。

スイッチの右隣はVCC2系統の表示LED。 

更にその右側にはブースト動作用の照光タクトスイッチがあります。
これも秋月で売ってるTS-ALGWRH-Gという製品。
在庫限りだそうですが、手持ちが有るので採用しました。
ブースト中はスイッチ中央のLEDが点灯します。

そして一番右端のLEDが+5V系統の表示LEDです。

このLEDの奥手の方にちょっと大きな抵抗が居ますが、
これはVCC2の負荷抵抗です。
3Dモデルだと基板にベタ載せですが、単に手抜きモデリングしてるだけでして、
実際の実装時は基板から少し浮かせる様にいたします。

この抵抗は3Wの酸金抵抗。
丁度、秋月電子で赤羽電具製の酸金抵抗を扱っているので採用してみました。
赤羽電具の抵抗は質が良いそうです。
秋月電子に推薦してくれた方に感謝ですね。

そして最後、基板中央 左寄りのところに、フォトMOSリレーがあります。
ブースト動作の電流回路ON/OFFの要です。

回路図で東芝のTLP3543Aと記載してますが、他社同等品でも構いません。
この基板ではC接続で使用しているので、最大10Aまで流せます。
この時のオン抵抗は僅か5mΩ。
ブースト動作中に流れる電流は約2.5Aですから、12.5mVしかドロップしません。
なんとも凄いですね。
メカニカルリレーの肩身が狭くなるばかりです。(;;

 

以上、メイン基板については こんな感じでございます。

2025年3月5日水曜日

X68K電源ユニット用ダミーロード その1

 手が空いたので、私物のX68000のオーバーホールに着手。
とは言っても、電源部の消耗部品交換だけなのですが。

とりあえず部品交換は終了したので、次は動作確認ですが、
電源ユニットを本体に接続して電源投入というのは いささか乱暴。
そこで疑似負荷装置、いわゆるダミーロードを作ろうと思い立ちました。

ちなみに、単に動作するかどうかだけならば簡単に確認可能です。
本体に繋がずに電源ユニットにAC100Vを投入すれば、
電源ユニットが起動する仕様だからです。
空冷ファンの動作で、電源が起動しているか否かも目視できます。
しかし+12V系統以外は無負荷状態。
ハンダ不良等の接触不良については ある程度の電流を流さないと見極めできないので、
この状態では動作チェック完了とは言えないわけです。

 

ターゲットとなるX68000は5インチFDDを内蔵している、
マンハッタンシェイプ型の内蔵電源といたします。
他には3.5インチFDDを内蔵しているcompact型が存在しており、
こちらは電源の出力容量が異なります。
しかし当方ではcompact型の電源ユニットを触ることがほぼ無い為、
今回はスルーする事にいたします。

 

上記の電源ユニットの出力容量ですが、定格値は不明です。
しかし回路からある程度の推測は可能。
常時出力の5VであるVCC2は、出力レギュレーターが78M05なので最大0.5A、
+12V出力ぱSI-3122Vの容量より、最大2A、
-12V出力は78M12の容量より最大0.5A、となります。
最後に+5V出力ですが、整流ダイオードの容量が12Aなので、
これを超える事はありえません。
X68000本体記載の消費電力を加味して考慮すると、
+5V出力の容量は約10Aと推測されます。

 

ではダミーロードの方の仕様ですが、
さすがに100%の負荷を掛ける必要は無いと思われます。
耐久試験を行うわけではありませんので。(笑)
ですので目安としては50%前後の負荷をかける感じにします。
正確な値は入手可能な抵抗器との兼ね合いで決定。

ということで、以下が全体回路。








X68Kの電源ユニットから出ている出力コネクター2つを接続します。
回路中の冷却ファンというのは、X68K電源ユニットの冷却ファンではなく、
このダミーロードのヒートシンクに付ける冷却ファンです。
さすがに約50Wの発熱となると強制空冷した方が安全です。

電源ユニットを繋いでAC100Vを投入すると、VCC2に5Vが出てきます。
VCC2はベース基板上のR5が負荷になっており、ここに約0.2A流してます。
同時にLEDであるD2を点灯させ、VCC2出力中を目視できます。

SW1が電源ユニットの起動スイッチです。
SW1をオープンにすると電源ユニットが起動します。
X68Kの電源ユニットは内部動作にVCC2が必要なので、
VCC2が正常出力されていないと、SW1を操作しても電源ユニットは起動しません。

電源ユニットが正常起動したならば、
+5V、+12V、-12Vの各系統に電圧が出てきます。
+5V系統にはLEDのD3を繋いであるので、出力が視認できます。
また、+12Vが出てきていればヒートシンクの冷却ファンも動作します。

この時点では+5Vが5A、+12Vが約1A、-12Vが約0.24Aの負荷が掛かっています。
この負荷はヒートシンク上のメタルクラッド抵抗が負担します。

+5V系統には負荷ブーストの機能を入れてあります。
通常状態時にSW2を押すとRL1がONし、負荷ブースト状態となります。
ブースト中は+5V負荷が2.5A増加し、トータル7.5Aの負荷となります。
RL1がONすると自己保持状態となる為、SW2を離してもブースト状態のままです。
ブースト状態を解除するには電源ユニットを停止させる必要があります。

 

電子負荷装置のような高度な機能はありませんが、
とりあえずの確認としては これで十分かと思います。

PIC10F222とPIC10F322

 先日、ちょっとしたタイミング制御回路を組む為、PICマイコンを使用。
2、3本程度の制御だったので、一番小規模のPICで十分。
秋月電子の在庫から検討すると10F222が手頃かと思いましたが、
手持ちが無かったので10F322を使いました。

量産案件ならば単価を考慮して10F222を選ぶのでしょうが、今回は単発。
送料かけて10F222を購入してたら割が合いません(笑)

 

無事、10F322で完成したわけですが、
改めて後学の為にと10F222をした場合も検討してみました。
すると!!
ビックリするほど中身が違ったんですね。
量産ならともかく、単発ならば10F322を使用して正解でした。

せっかくなので、その違いを書いておこうと思います。
なお、マイコンレビュアーではないので、
あまりに細かい点まで追求していない点をご留意願います。

 

10F222も10F322も頭は同じ10F。
小規模タイプという意味合いですね。
DIPパッケージは8ピンになっていますが、
使われていないピンが2本も有るので、
当然ながらI/Oピンも少なくなっていて、4本しかありません。

問題はその次の桁。
200番台か300番台かで、雲泥の差がありました。

大雑把に言えば、300番台品は昨今一般的な12Fや16F等の8ビット品を
シュリンクしたような代物です。
アセンブラで書くにしても、ほとんど差は感じないでしょう。

それに対し200番台品は いにしえのPICマイコンの系列と言えます。
12C508等を彷彿とさせる感じです。

Cで書くならば、案外この差は実感できないかもしれませんが、
アセンブラで書くと違いは歴然です。
そもそもこのクラスのPICマイコンはリソースの観点から
Cで書いて大丈夫?という疑念があります。


では少し具体的に差を見て行きます。

10F322の周辺機能はA/Dコンバーターを初め、
8ビットタイマーが2つ、PWMモジュールやCLC、NCO、CWGと、
小規模クラスとは思えないほど多いです。
これでも全レジスタがBANK0に収まっているのは助かりますね。 

それに対し10F222は、A/Dコンバーターこそ載ってますが、
他には8ビットタイマーが1つだけ。
この辺はさすが小規模品と納得する感じです。

そしてレジスタマップを見てみると・・・・・
    INDF
    TMR0
    PCL
    STATUS
    FSR
    OSCCAL
    GPIO
    ADCON0
    ADRES
以上の8つしかありません!

INDF~FSRはどのPICでもお馴染みですね。
それ以外は4つだけって、昨今の一般的なPICを触ってる方なら疑問を感じかと。

200番台品には、隠しレジスタが存在するのです。
それが以下の2つ。
    TRIS
    OPTION
はい、どちらも見慣れたレジスタですよね。

このレジスタの内容は300番台品とほぼ同じです。
ですが、隠しレジスタという点がやっかい。
レジスタマップ上に存在しない為、通常の命令でアクセス出来ません。

ではどうやって扱うかと言うと、専用の命令が用意されているんですね。
TRISレジスタへの書き込みはTRIS命令。
OPTIONレジスタへの書き込みはOPTION命令、という感じです。

では各々のレジスタからの読み出しは??
はい、有りません。
隠しレジスタへは書込みしか出来ないんですね。 


そした多分、200番台の一番大きな差は、割り込みが無い点かと。
割り込みなんて使わなくても書けるから別に困らんと言う方も多いかと。
実際私も割り込みは使わない様に書くことが多いです。

しかし割り込みを使わないという方でも、
割り込みフラグを使ってる方は多いのでは??
例えばタイマーで時間を作る際、タイマーが出す割り込みフラグを
ポーリングして処理する、なんてルーチンを書いたりしませんか?
200番台だと、これが出来ないんです。
割り込みフラグが存在しませんから。

ですのでタイマーを使う際は値を直接読んで処理するという、
なかなかに面倒な手間が発生するわけです。

 

他にも200番台の特徴としては
  内蔵クロック周波数が4MHzと8MHzしか選択できない点
  内蔵発振器の校正値をユーザーが処理する必要ある点
  周辺機能が外部ピンを使用する際、プライオリティが設定されてる点
などが挙げられます。

 

秋月電子での単価の差はビックリしましたが、中身を見てみると価格は納得。
よほどの事がない限り、10Fシリーズを使うならば322の方をお勧めいたします。

2025年2月20日木曜日

X68K メイン基板の黄色い電解コン問題

 X68Kのメンテ作業にて、消耗部品である電解コンデンサーの交換はよく聞く話ですね。

その中で やっかいなのは、 メイン基板に載っている黄色い電解コンデンサー。
部品番号は製品で異なるので具体的に記載出来ないのですが、
ニチコンのSLシリーズ 6.3V 220μF という代物です。
この電解コンはバックアップ電池からのバックアップ電源系統に入ってます。

このSLシリーズという電解コンは低漏洩型、つまりリーク電流が少ない代物。
電解コンでリーク電流がガバガバ流れてしまえば、
それだけで電池を消耗してしまいますから、ここに低漏洩型を使用するのは当然ですね。

低漏洩型の電解コンデンサーは85℃品の一般形と同等の寿命です。
なので現存するX68Kでは 遥か昔に寿命が切れてしまっていますから、交換は必須。

しかしこのタイプの電解コンは需要が激減してしまってる様で、
各社とも製造を止めていってます。
まだ製造を続けている会社も有りますが、入手はほぼ不可という状況です。

 

実はですね、X68Kシリーズの内、PROのメイン基板には
この電解コンが載っていないんですね。
なんと通常タイプ電解コンが使われているんです。

あれ?と思ってしまいますよね。
なので、具体的な値に踏み込んでみることにします。

X68Kにてバックアップ電源の負荷は2種類。
1つ目はRTCであるRP5C15、
2つ目はSRAMであるHM6264です。

データーシートで確認すると、RP5C15のバックアップ電流は15μA
HM6264についてはX68Kでは低消費電力型が使われているので、
バックアップ時は10μAという値。
ただしX68KではHM6264が2個載っているので、倍の20µAという事になります。

合計すると、35μAですね。


次に上記の電解コンについて。 

  SLシリーズのリーク電流を計算してみると、
  3V × 220μ × 0.002 = 1.32μA という値。

  通常の85℃標準品の電解コンを計算してみると、
  3V × 220μ × 0.01 = 6.6μA という値になります。

リーク電流だけを見ると5倍も差があるので、おっ!!と思ってしまいますね。

 

しかしこれをRTCやSRAMも含めた電流で計算してみると・・・・

  SLシリーズの場合 35+1.32 = 36.32μA
  標準品の場合  35+6.6 = 41.6μA

なんと2割程度しか差がありません。 

これなら、入手性の悪い低漏洩型を無理に探さずとも、
標準品の電解コンで構わないかもしれません。
(実際には85℃標準品ではなく、105℃長寿命品の方が好ましいわけですが)

 

更に申し上げると、昨今は積層セラミックコンデンサーの大容量化が進んでるおかげで、
定格値100µFなんていう代物も容易に入手できるようになりました。
実際、秋月電子では6.3V100μという積セラコンが10個280円で売ってます。 

積セラコンは完全な固体コンデンサーですから、
電解コンのようなリーク電流は発生しません。
(端子間絶縁に絡む僅かな電流は存在しますが)

すると、無理に電解コンを使わなくても、積セラコンでいいんのでは?
という話になってくるんですね。
秋月電子の積セラコンは安価なだけあって、Z品ですので、
実際に見込める容量は半分程度の約50μFです。

220μFを代替するなら4個必要になるわけですが、
そもそもここは厳密な容量が求められる場所ではありませんので、
2個パラ接続の100μFでも実用上は問題無いでしょう。

もし今後、この電解コンを置き換えする場合は、積セラコンをお勧めします。 


最後に1つ、大事な事を。
黄色い電解コンの代替の際に、
OSコン等の導電性高分子電解コンは絶対に使用しないでください。
これらの電解コンはリーク電流が桁違いに多いからです。

2025年2月19日水曜日

X68K 底基板のバックアップ電池

 X68KではRTCとSRAMへ、常時電源供給する為に電池が載っています。
昨今ならばフラッシュメモリーが有るのでSRAMなんか使わないわけですが、
当時はフラッシュメモリーが登場する前だったので、SRAM一択だったんですね。

さてこの電池ですが、X68K ACEまでは2次電池であるニッカド電池が使われてました。
この辺りも時代を感じますね。

それ以後の機種では1次電池であるリチウム電池が使用されています。
最近のPCであればリチウム電池には電池ホルダーが使用されてて、
ユーザーが自分で交換出来るようになっていますが、
当時はユーザーがPCを開封することは想定されておらず、
当然ながらセルフ電池交換は考慮されていませんでした。

その為、X68Kのリチウム電池はタブ付きのハンダ付け用が使用されており、
電池交換作業は基板に手を加える必要があります。

 

交換作業自体の難易度は さほど高くありません。
3ヵ所のスルーホールのハンダを除去し、電池を交換して再ハンダするだけです。

一番の問題はリチウム電池の入手性。
タブ付きのリチウム電池は一般人が使う代物ではないので、
そこらにポンポン売ってる代物ではありません。

製品製造の際に消費される事がほとんどですから、
大抵はトレー単位で流通してるので、数個だけ買うのは至難の業だったのです。

 

そんな状況下、ケースで有名なタカチ電機さんが やってくれました!!
タブ付きリチウム電池の個別品を出してくれたのです。

そんなバンバン売れるようなモンではないので、
置いてるお店は少ないかもしれませんが、
ともかくも入手可能なメドが立ったのは事実。
タカチ電機さん、ありがとうございます。

 

X68K Expert等のマンハッタンシェイプ品の底基板に載ってるのは、
タカチさんのCRH2450Nと同等です。
実はタカチさんでは更に容量の多いCRH2477Nという製品も出してまして、
電池の厚みが違うだけなのでX68Kに実装可能だったりします。
もちろん値段も差が有るので、どちらを選ぶかは好みの問題かと。

要確認なのはCompactシリーズです。
わざわざ電池の種類を変えるとは思えないので、
たぶんマンハッタンシェイプ品と同じ電池を使ってると思うのですが、
もし交換される際は現物を確認してから電池を手配される方がよろしいかと。

 

 

最後に1つだけご注意頂きたいお話を。

タカチさんのタブ付きリチウム電池ですが、
初期ロット品は導電スポンジで梱包されて出荷されてる事が判明してます。

当然ながら、これだと保管中にガンガン放電してしまうわけでして、
例えばCRH2450Nとかだと せいぜい5年位で電池が空になってしまいます。

タカチさんもこの問題には気づいたようで、
次のロットからは絶縁スポンジに変わってるそうなのですが、
問題は初期ロットがそのまま流通してる事です。

普通に考えたら問題ある製品は回収すると思うのですが、
それをやっていない様なんですね。
なのでもし、買った電池が黒いスポンジに刺さってた場合、
電池が消耗してる可能性有るので交換対応依頼を検討した方がいいでしょう。

幸い、このタブ付き電池をタカチさんが出したのは割と最近なので、
初期ロットの保管期間も1年経っていないのでは?と思われます。
これならばCRH2450Nでも半分以上は容量残ってると思うので、
交換対応の手間を惜しんで そのまま実装してしまうのも有りかもしれません。

余談ですが、タカチさんのラインナップの内、一番小型のCRH1220なんかは、
半年程度で電池が空になってしまうので、導電スポンジ品は交換対応必須です。
たぶん、初期ロット品は全て電池が空になってしまってるかと・・・・・

 

2025/2/20 追記

 タカチ電機様に交換をお願いしたCRH2477Nが届きました。
スポンジが交換前と同じ物の様に見えたので、開封して確認。
すると、確かに導通の無い、絶縁タイプのスポンジでした。
しかし色味が やっかい。
真っ黒ではなく、ダークグレー色なので、
各々のスポンジを並べてみれば、色の差は明確なのですが、
袋に入ったまま単体で見ると、どっちなのかが判りづらいかも。










梱包のどこかに、ロットが判別できる記載があると良かったのですが・・・・

ジャンクの小型洗濯機

 友人に連れられて、久しぶりにハードオフを訪問。
実用的な中古品から、ヤバい雰囲気が漂うジャンク品まで並ぶ、
ハード屋の琴線を刺激するお店です。

 

色々物色していて、これを千円で発見。


 







 

 

バケツサイズの洗濯機ですね。

用途はかなり限られてるものの、小物をちょこっと洗う程度なら、
手洗いよりは楽になるでしょうという感じ。

で、なぜこれが千円だったかと言いますと、
ACアダプターが無いので動作しないジャンクだったからです。
しかし電源だけの問題で、本体が壊れていないのならば、
なんとかできるはず。

というわけで買ってみた次第。

開封し、本体を見てみると、センターピンがφ2.1のDCジャックの模様。
EIAJコネクターよりも  こっちの方が楽です。

しかし、極性が書いていません。
DC入力は間違い無いので、極性確認は必須。
大抵、センターピンがプラス側なのですが、
そこは中国製ですから、一応疑ってみる必要があります。(笑)

余談ですが、ソニー等の一部メーカーがセンターマイナスで製品を作ってて、
諸悪の根源みたいな言われ方してるのを見かけることがあるのですが、
あれにはきちんとした理由があるのです。
用途によっては、センターマイナスでなければダメな場合があるという話。
それ以上は脱線しすぎるので、気になる方はぜひ自分で調べてみてね。

 

さて、話を戻してまして、極性がケースに書いていないのならば、
中を開けて配線を見るのがてっとり早いわけです。
というわけで御開帳。

中は至ってシンプルで、モーターの機構部と、制御基板が1枚だけ。
DCジャックの配線を確認すると、やはりセンタープラスでした。

ふと基板を見ると、電解コンが3つ載っています。
ここまで開けてますから、ついでにさくっと交換してやることに。

10V100μが1個と、35V220μが2個。
220μの1つは、100μとパラ接続されています。
ならば、100µと330µが1個ずつでも構わないと思うのですが、
ちょっと不思議な設計ですね。(笑)

 

基板の裏側はガッツリと厚めのコーティングが施されています。
洗濯機なので、基板を水から保護する対策がされててもおかしくありません。
そんな大した製品とは思えないので、この点は ちょこっと感心。
しかし基板の表面は無対策なので、結局のところ あまり意味が無い気も(笑)

ちなみにちゃんとしたメーカーの洗濯機の場合、
基板丸ごとポッティングされて完全保護されてたりします。

コーディングを剥がして電解コンを交換。
すると、ケースと干渉するではありませんか!!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

基板の右下に有る電解コン、シルクの位置通りに実装すると、
ケースのリブに当たってしまい、基板が収まらないというオチ。
さすが中国製(笑)
どおりで、交換前の電解コンが、えらくカッコ悪い実装になってたわけです。

他にちょっと気になったのは、どの電解コンも基板に糊付けされてなかったんですね。
モーター機構部からの振動が来ますから、寝かせ実装する場合は、
電解コンを基板に糊付けして固定しないとアカンのです。
電解コン交換の際、KE-348で基板に糊付けしておきました。

 

とりあえず電気周りは これでOKのはず。

実は別な問題も有りました。

底カバー止めビスのボスが折れてる!!

基板やモーター部を覆っている底カバーは、4本のビスで本体に留めてます。
そのビスを受ける為に本体側からボスが立っているのですが、
4本の内2本が折れてるのです。
その為、2本しか効いてません。

元の持ち主が底カバーを蹴ったりしたんじゃないかな?
たぶん、ハードオフ側も気づいてないんだろうなぁ・・・・

ボスの完全修復は、プラリペアを使用すれば可能だと思います。
でもこの製品の場合はボスが非常に長いので、
単に長いビスで留める様にすればOKかと。

ボスの高さは元通りに合わせる必要があるので、
折れてるボス片をドリルで掘って穴を広げ、ビスがスルーで通るようにします。
それを接着剤で元の位置に糊付けします。

あとは長いビスを使ってカバーを留めれば完成ですね。

 

なお、実験用電源から12Vを供給してみたら、ちゃんと動作しました。
秋月電子辺りからACアダプターを買うのも有りですが、
どうするかは 改めて考えることにします。

2025年2月7日金曜日

HR10A用治具

 ヒロセのHR10型コネクターは なぜか私の上位のお客様方に好評。
なもんで、これの加工依頼をぽちぽち頂きます。 

たぶん、小型という点がポイントなのかな?と思ってますが、
裏を返せば加工が大変という話に。

パネルに固定するレセプタクルの方は まだマシなのですが、
ケーブルに付けるプラグの方は結構難儀する代物。

 

その、HR10Aというプラグですが、組立には治具が必要です。
ボディを締め込む際、プラグを何かに差し込んで固定しなければなりません。

当然のごとく、 メーカーから純正の治具が出ております。
しかしこの治具、さほど安くないんですね。

そこで自作することに。


 



全景

 

 

 

 

 

プラグの相手方は、パネル固定用のレセプタクルで十分です。
まぁ、ピン数毎に種類分けが発生してしまいますが・・・・・

3Dプリンターで出力した箱にレセプタクルを付けるだけの構造です。
治具としては これで十分。

 

せっかくレセプタクルを使うのですから、更にもう一捻り。
結線チェック用治具の機能も付加してしまいます。

レセプタクルから線を引き出して、導通チェッカー用のパッドを用意。
これで作製したケーブルのチェックも出来るというわけです。

 

余談ですが、今までお客さんから依頼されるのは、
HR10-7シリーズばかりでした。
HR10の中でも一番小型のシリーズなので、作業難易度が高くてウンザリぎみでした。

しかし今回初めてHR10-10シリーズの加工を受けたのですが、
一段階大きくなっただけで難易度がガッツリ下がりました。
これなら あまり苦にならない感じ。

HR10シリーズを使うなら、シェルサイズ10以上の物をお勧めします。

2025年1月24日金曜日

3.3Vロジック信号から5Vロジック信号への変換

 昨今、マイコンを含む各種ICにて3.3V動作品が増えてきました。
しかしながら5V動作のICも健在です。
すると当然、3.3V信号で5V動作のICを押す必要も出てくるわけでして、
レベル変換の知識が必要となってきます。

今回はそれに関するお話。

3.3V動作のマイコンで5V系ロジックICを押す場合、
もっとも簡単なのは74HCT等のTTLレベル入力のICを使う方法。





上記のような構成で、簡単にレベル変換が可能ですね。

さて、ここからが本題。

何かしらの事情で、74HCTではなく74LS等のTTLロジックを繋ぐ必要が出た場合は??




 

 74HCTを74LSに置き換えたのが上記の図。
一見、これで問題無いに見えますが、実は注意すべき点が存在します。

それは、TTLロジックからの流出電流

74HCTの場合は入力インピータンスが高いので、
特に気にする必要ありませんでしたが、TTLロジックだとそうはいきません。

TTLロジックの入力部は以下の様な感じになっています。



 

 

 

入力がHの時はほとんど電流が流れませんが、
入力がLの時は、トランジスターのベースから電流が流れてくるのが解りますね。

この図を最初の方の全体図と合体させると こんな感じに。






 


これだと、マイコン出力がHの際、
この信号線の電圧が3.3Vをオーバーしてしまうのが、お解りいただけますね?

僅かに3.3Vをオーバーする位ならば 大した問題にはならないと思いますが、
仮に4V近くまで上昇したりすると、看過できない問題になってきます。

ちなみにどの位 上昇するかは、TTLロジックからの流出電流量と、
3.3Vプルアップ抵抗値次第です。
抵抗値が低ければ、上昇量を抑える事ができますが、
それでも3.3Vを超えてしまうのは間違いないわけで、
あまり好ましい状態ではありません。

 

そこで、お勧めしたい方法がこれ。


 

 

 

 

3.3Vプルアップの代わりに、プルダウンする方法です。 

プルダウン抵抗値が高いと効き目が悪いので、4.7KΩ位がいいでしょう。
74F等の高速ロジックICの場合には もっと抵抗値を下げたいところですが、
するとマイコンの出力段に対する負荷が大きくなってしまい、
消費電流も増えてしまう点に留意が必要でしょう。

ちなみに74F等の高速ロジックICは、74LS等に比べて流出電流が多い傾向です。



まぁ専用のレベル変換ICを使えば、こんな面倒な事を考えずに済むのですが(笑)

2025年1月21日火曜日

SOP8P-DIP1

 変換基板の新作です。
1.27mmピッチのSOPをDIPへ変換する基板です。


 

 

 

左が表面、右が裏面 






 こんなの、巷にいっぱい存在するじゃん、と思われるでしょうが、
これだ!!と思う製品が無くて、自分で作ってしまいました。

既存品での不満点は主に以下の2つ。
 1.ビアにレジストが被っていない。
 2.パターンが細い。

ビアのレジストは必須というわけではありません。
試作開発用基板の場合、基板に改造を加える事が多々あるので、
そのような場合にはビアが露出してると助かる場合があります。
しかし製品基板の場合は露出しているビアは百害あって一利なし。

ビアよりも大きな問題点は2つ目のパターン幅。
ロジックICのような低速デジタル回路の場合は大して問題にならないかと。
しかしアナログ回路の場合には、細いパターンは気になってくるわけです。
デジタル回路の場合でも信号線はともかく、
電源パターンが細いと動作不安定の原因になってくるわけですね。

しかしこの手の変換基板では、どのパターンが電源線になるかは未定。
なので、どのパターンも一様に太くなってる必要があるわけです。


そんなわけで、作ってみたのが この基板。
材質はFR-4です。

厚みは1.0mm。
変換基板内のパターン長を抑えつつ、基板自体の強度もある程度確保し、
基板単価も抑えられるという厚みです。

表面処理は鉛ハンダレベラー処理です。
これも単価を抑える為ですが、鉛フリー用の需要が出てきた場合は、
金フラッシュメッキ品の製作を検討しようかと。
鉛フリーハンダレベラー処理品も製作可能ですが、
長期保存に向かないので、今回の様に長期在庫になりそうな基板には不適です。

 

DIP側のソケットは秋月電子で売ってる2227P-08G-03-L2を想定してます。
このソケットは変換基板側の飛び出しが少なくて済むので、
まさに変換基板向けと言えるでしょう。

 

機会があれば、頒布したいと考えてますが、
現時点ではその機会がありません。
もしご興味持たれた方は、直接ご連絡をお願いします。

この基板は原価が非常に安い為、1枚ずつの頒布はどうかと思うので、
2~4枚セットでの頒布を考えております。

ソケットは秋月電子で購入できることから調達は容易なので、
基板のみでも構わないかな?考えてますが、
要望があればソケット付きも有りかなと・・・・・・

2025年1月14日火曜日

窓からの冷気

 ここ最近の作業で、非常に激しい肩こりが発生し、難儀しております。
筋肉疲労は寝ればある程度回復するわけですが、
その就寝環境にちょっと問題がありまして・・・・・

現在の寝室の配置では、頭の先に窓が有るように布団を敷いてます。
問題は窓から降りてくる冷気。
これが寝てる私の頭と肩に直撃するわけですね。

冬場の一時期だけの問題だったので、今までスルーしてきたわけですが、
ここにきて その問題が大きくなってしまったいうわけ。


布団の配置を変えるのは ちょっと難しいもんで、
次に考えられるのは窓への対策。

2重窓へ置き換えられればベストですが、
費用を考えると ちょっと・・・・ね。

その代わり、お手軽に可能な対策としては、
窓の内側に断熱になるものを貼るという方法。

スタイロフォームの様な専用の断熱材もありますが、
発泡スチロールでも結構効果はあります。
ただ、どちらも光を通さないので、窓からの採光が阻害されてしまいます。

上記に比べてお手軽なのがエアーキャップ、通称ぷちぷちです。
断熱能力は劣ってしまいますが、安価で貼りやすく、ある程度は光も通ります。
なので今回は これで対処しようかと思ってるわけでして、
こんな時間にも関わらず、寝室の窓周りで作業開始。(笑)

貼りつけられそうなメドは立ちましたが、問題はエアーキャップ。
うちには帯電防止タイプのピンク色の物しかありません。
これを貼ったら、朝の光が いいムードに・・・・・ orz

さて、どうしましょうかねぇ。

2025年1月5日日曜日

3Dプリンターの歪み

 うちに2台目の3Dプリンターである、Sermoon D1が導入されてから、
既に約3年経過しています。
導入直後は色々トラブルが続出し、1台目の3DプリンターであるidBOXが
手放せない状況でした。

しかしながら現在はSermoon D1がかなり安定し、
idBOXの出番はほとんど無い状況となっております。

しかし、今更という感じではあるのですが、
Sermoon D1で出力した治具が歪んでるという事態が発生。
要対処案件勃発というわけです。


今回の歪みはX軸とY軸の交差角度について。
これは当然ながら90度でなければなりません。

しかし今回出力した治具が、ターゲットの板金パーツと微妙に合わないのが発覚。
設計上は直角になってる箇所が90度からズレていることが判ったのでした。

CAD上の設計データーは当然直角になっているので、
これが90度からズレるのは、出力した3Dプリンターの問題でしょう。

実は以前、下の様な形状を出力し、寸法を測定したことが有りました。








 

縦横20cmの正方形です。
真上から見た状態で、厚みは4mmとなっています。

これを出力し、4辺の長さを測ることで、
出力品の寸法誤差をおおよそ把握することができます。
誤差の原因は複数ありえますが、ABSの収縮による誤差が一番に考えられるかと。

これを基に、今まで出力品の寸法調整を行ってきたわけですが、
残念ながら直角がきちんと出ているかまでは確認していませんでした。

理由は単純で、この正方形の角の角度を正確に測るには、
それなりの道具が必要だからです。

XY軸の交差角度は3Dプリンターの組立精度依存が大きいです。
自分で組立てる場合は、当然留意しなければならないポイント。
しかしこのSermoon D1は組み立て済みプリンター。
当然ながら、ある程度まで調整済と解釈していました。

しかし今回のように、目に見えてズレが確認できたとなると、
改めて交差角度の具合を調べる必要がありますね。

 

では実際に確認方法ですが、先の図のような四角形を出力し、
その角度を測る方法もありますが、測定道具が高い!!
万札が飛ぶ覚悟が必要となっちゃいます。

単に直角になっているかを調べるだけならば、
大工道具でおなじみの角尺を使う手もあります。
これならば5千円程度済みます。
しかしこれだと、直角からズレているのは解っても、
どのくらいズレているかまでは把握できない点に要注意です。


そこで私が使った方法は、まず下の図のものを出力します。







 

 

はい、単純なバッテン形状です。
四角形の対角線の長さを見てやろうというもの。

私が出力したものは、対角の長さが30cmというサイズ。
出力物を実測したところ、対角線長が数mm合いませんでした。

実測値を参考にCADで形状を描いてみたところ、
XY軸が交差角度が約0.4度ズレてる模様。

たかが0.4度か、と言いたいところですが、
20~30cmくらいの出力物だと、これで数mmの歪みが出てしまうのです。
案外バカに出来ません。


おおまかなズレ角度と共に、歪みの寸法も把握できたことで、
どれくらい修正すれば良いのかが目に見えてきました。

さてでは実際にSermoon D1を修正してみることにしましょう。

Sermoon D1はX軸方向のロッドが本体の前後に2本走ってる上に、
Y軸方向のロッドを2本並べたユニットが載っており、
そのユニットにヘッド部が取り付けられております。



 

 

 

 

 

 

 

X軸のロッドは本体フレームにガッチリ固定されているので、
こちらを調整するのはほぼ不可能です。
従って調整するとしたらY軸の方。

ではY軸の傾きを調整するには??
実はこれ、そんなに難しくないんですね。
先にも書きましたが、Y軸ユニットはX軸ロット上に載ってまして、
Y軸ユニットを左右に動かすのは、X軸ロットのすぐ上に有るベルトなんです。

先の写真だと奥側のベルトしか見えてませんが、
手前側のロットの上にもベルトが存在します。
つまり、前後のベルトの位置をズラすことで、Y軸の傾きが変えられます。

わざわざ奥側のベルトに手を付ける必要は無いので、
調整は手前側のベルトを使うことにします。








 

 

3Dプリンター内部から撮った写真です。
Y軸はステッピングモーターに繋がったドライブシャフト1本で駆動されています。
このドライブシャフトの前後にプーリー(赤丸の個所)が取り付けられ、
前後のベルトをそれぞれ動かしています。

前側のプーリーの留めネジを緩め、少し回してやることで、
Y軸の傾きを変えてやることができます。
ただし、Y軸ロットの固定部に力が加わることになるので、
大幅に変更することはできません。
せいぜい5mm位が限度かな。

次に問題になるとしたら、調整位置決めです。
XY軸の歪みを解決したいのですから、
X軸ロットとY軸ロットの交差角度を測りながら調整するのが本筋です。
しかしこれ、現実的ではありません。
専用の治具と、それなりの測定器が無いと測れないからです。

結局、フレームをベースに合わせる感じで妥協することにしました。
X軸ロットが固定されているフレームからの距離を揃えることで、
Y軸の歪みを修正してみようというものです。

ただこれ、フレームが歪んでいないという前提が必要です。

先のバッテン形状の出力で、具体的なズレ寸法が大まかに把握できました。
実際にユニット部とフレームとの距離を測ってみると、
だいたいその数値と合うことが判明。
もしそうなら、フレームはあまり歪んでいないという話になります。

それを期待して、フレームからからの距離を揃えるように、
ユニットの前側位置を微調整してみました。
ちなみに前側ベルトのプーリーは2本のイモネジで固定されていますが、
2本ともあまり強く締められていませんでした。
調整しやすいように、ということだったのかは謎ですが、
本来組立時に1度だけ調整すれば済む箇所ですので、
しっかり締めていて欲しいところです。
(この辺は中華クオリティなのかな)


さていざテスト出力です。
先と同じ、バッテン形状を出力してみます。
すると、ほとんど対角線長誤差が無くなりました。
実勢、ゼロではないはずなのですが、0.5mmも無い感じです。
この位になると、ノギス等の測定器じゃないと正確に測れませんが、
うちにはそんな大きなノギスはありません(笑)

ともかく、各段に歪みが減ったことは間違いありません。
実際に最初に問題になった治具を再出力してみましたが、バッチリでした。

 

 

歪み問題は解決しましたが、ついでもう1つ情報を。

一般的なFFF式プリンターではPLAやABS等の樹脂を使います。
これを200℃位の高温で溶かして造形するわけですが、
その後は常温まで冷やすわけでして、すると当然、冷却収縮が発生します。

収縮が問題ならない用途も存在しますが、
治具等のように寸法精度が必要な用途では問題になってきます。

収縮を見越してCAD上の設計サイズに折り込む手や、
3Dプリンター出力時の造形サイズ倍率を手動変更といった方法で、
対処することも可能ですが、
私も愛用しているPrusaSlicerに、これに対する補正機能が搭載されました。








 

フィラメント設定のモード||アドバンストの項目内に、
上記のような設定が存在します。

初期値は0%ですので、補正値は自分で用意する必要があります。

方法は単純で、各自の3Dプリンターの出力可能サイズ内で、
なるべく大きな四角形を出力し、その寸法を実測して補正値を計算するだけです。

私の場合は20cm角の正方形を出力しました。
ABSでは実測値が約199mmでしたので、補正値は0.5%という結論です。

ちなみにこれ、Polymaker社のPolyLiteABSによるもの。
メーカーや品種が変われば補正値も変わる可能性ありますのでご注意を。

一応念のため、PolyTerraPLAでも測ってみましたが、
実測値で約199.6mmくらいでした。
PLAはABSと比べ、収縮は少ない感じです。
でも折角なので、ちょこっとだけ補正を入れておきました。


上の図ではZ軸方向にも補正値が入っています。
これも当然ながら実測結果に基づいた値を入れる必要があるわけですが、
Z軸方向は被測定物の出力から大変なので、あまりお勧めは出来かねるかも。
一応試してみましたが、手間に対して割りが合わない感じなので、
私はこれ以上深追いしない予定です。